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時流ワイド

貧困の時代と向き合う(2/5ページ)

2012年12月20日付 中外日報

平等、共に生きるとは何か 格差広がる今、弱者に寄り添う

1990年代のバブルの崩壊以降、高い失業率や非正規労働者の増加など、日本も格差社会になったと言われて久しい。平成21年、長妻昭・厚生労働大臣(当時)は、初めて日本の相対的貧困率15・7%を公表。その後、値は16・0(22年発表)とさらに悪化した。この数字は、先進国の中でも高水準で、格差や貧困問題は、もはや遠い国の話ではないことが白日の下にさらされた。「安心して暮らせる社会とは何か」という答えを求め、貧困問題を直視し、社会的弱者に寄り添う宗教者らの姿を追った。(赤坂史人・西谷明彦)

相対的貧困率 国民の所得格差を表す指標。年収が全国民の年収の中央値の半分に満たない国民の割合を指す。国民の経済格差を表す指標で、国や地域によって貧困のレベルが違う。

貧困を直視し「知る」 祖師も重んじた実践

浅草の商店街で寝る路上生活者におにぎりを配る「ひとさじの会」の吉水副住職ら
浅草の商店街で寝る路上生活者におにぎりを配る「ひとさじの会」の吉水副住職ら

暴力、薬物、自死ともつながる問題

浄土宗の青年僧侶らを中心に活動する社会慈業委員会・ひとさじの会(渡部教道会長)は毎月2回、東京・浅草周辺を夜回りし、路上生活者に炊き出しで作ったおにぎりを配っている。

発起人の一人、吉水岳彦・光照院副住職(33)が、貧困問題に関わるようになったのは平成19年。路上生活者のための墓をつくってほしいとの依頼があり、貧困の現状と向き合う多くの支援者らと出会った。実際に、越年の炊き出しなどに参加すると、厳しい現実を目の当たりにした。「家庭内暴力や薬物、自死など、ありとあらゆる問題が貧困とつながっている」。貧困問題は、見ようとしなければ見えなかった。

「自分にとっても大きな学びだったし、もっと多くの人に関わってほしい」との思いから、平成21年に同会を発足。「法然上人は、本当にみんなが救われてなくてはいけないと考えて、念仏の教えに至った。祖師の教えを身に体しながら、苦しんでいる人たちに寄り添いたい」と語る。

その一方で「本当の平等、共に生きるとは何か」との悩みも尽きない。現場は、いつも苦であふれている。この世を穢土と言った法然上人の教えが胸に迫る。

夜9時を回った浅草の歓楽街。酒に酔ったサラリーマンや若いカップルが行き交う。よく見ると、道の片隅に一人の男性(66)がたたずんでいた。金田昭教・浄土寺副住職(32)が大きなおにぎりを片手に「大丈夫? 見掛けないね」とそっと声を掛ける。ちりぢりの髪に汚れた帽子を深々とかぶった男性は「上野の方から来た」とぽつり。左目はつぶったままで、見えていないようだ。「上野公園が(再開発で)きれいになって、寝ていたら禁止と言われた」と力無げに話した。

金田副住職は「知っていることと、知ることは違う」と話す。「知っているだけでは、何もしていない。知るということは、何かに対して動き始めている」と説明する。法然上人の言葉に「念仏為先(念仏をもって先と為す)」がある。実践(念仏)を重視した教えを示しており、金田副住職は「頭の中で考えていてもしょうがない。知ることが大切だ。とにかく実践だ」と熱く語る。

それでも、重いおにぎりを抱えて2時間の夜回りを終えた金田副住職は「われわれは、傷口に絆創膏を貼るぐらいのことしかできない。自分たちの非力さを感じる」と話した。だが真っ正面から貧困の現実を見つめる姿が、そこにはあった。

現在、活動には真言宗や日蓮宗、曹洞宗、金光教、キリスト者などの宗教者、そして多くの一般人が参加している。