ニュース画像
敬白文を読み上げ決意を示す菅管長
主な連載 過去の連載
エンディングへの備え
時代を生きる 宗教を語る
購読のお申し込み
新規購読キャンペーン
紙面保存版
トップ> 時流ワイドリスト> 貧困の時代と向き合う
時流ワイド

貧困の時代と向き合う(3/5ページ)

2012年12月20日付 中外日報

きらびやかな街から 追われる路上生活者

渋谷区で行政代執行

「渋谷区は、話し合いに応じよ!」。拡声器から大声が響く。この夏、東京都渋谷区の美竹公園で行政代執行が行われた。

美竹公園を囲った工事用バリケードの前で、ひときわ大きい声を張り上げていたのは、日本聖公会の信徒・楡原民佳さん(48)。現在、聖公会野宿者支援活動・渋谷の代表を務める。

平成16年11月末、楡原さんが事務をする目黒区の教会に、疲れ切った様子の青年が食事を求めてきた。青年は、渋谷区庁舎地下駐車場に寝泊まりしていると話した。

その青年と出会って以降、悶々とした日々が続いた。街はクリスマスムード一色。クリスマスは、虐げられた人々や貧しい人々の側に寄り添ったイエス・キリストの降誕を祝う祭りである。「貧しい人がいるのに、自分たちだけがぬくぬくとしてよいのだろうか」と自責の念に駆られた。力を失った青年の姿が脳裏から離れなかった。

「死にたい、食べるものがないと言った青年に会いに行こう」。クリスマスの翌日だった。食事を携え地下駐車場を訪れた。そこには多くの路上生活者らが寝ており、「ここは支援がない場所。私たちがいることがよく分かったね」という感謝の言葉が心に響いた。「こここそがイエス様がいらっしゃる場所ではないか。イエス様の弟子として生きようと志す私たちが、働くべき場所だ」と実感した。

以来、この地下駐車場で炊き出しや、生活相談などの支援を続けていた。

だが、今年6月11日、地下駐車場と美竹公園、区庁舎前公衆トイレの3カ所が同時に封鎖された。抗議行動を支援する山本志都・弁護士は「3カ所を同時に封鎖する必要はなく、路上生活者を排除する意図が見られる」と指摘。支援団体らは、4月にオープンした商業施設などの再開発が背景にあるとみている。

イエズス会司祭で、渋谷区の路上生活者を支援する下川雅嗣・上智大教授(51)は「家を失うことは命に直結する。生き死にに関わるような再開発は、決して許されない」と話す。

「きらびやかな街は要らない。みんなで支え合いながら共に生きていく社会が欲しい」と語る楡原さんは、常に気丈な姿を見せるが、くじけそうになることもあるという。宗教者が語る平和や絆の響きの良い言葉。それを聞くたびに、現実との落差にむなしさを感じるのだ。「この現実を知ってほしい。もう少し、みんな貧しくてもよいから、人間らしく仲良く生きようよ」