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時流ワイド

貧困の時代と向き合う(4/5ページ)

2012年12月20日付 中外日報

再出発しやすい仕組みを

必要とする人に届かぬ保障

「経済不安による路上生活者の増加を本気で心配した」と語るのは、佐野未来・ビッグイシュー日本東京事務所マネージャー。佐野さんらは平成15年9月、毎月発行する雑誌を路上生活者が販売し、その売り上げで販売者の社会復帰を支援する「ビッグイシュー日本」を立ち上げた。「当時、欧州の路上では、若い人が多くいた。日本もこの不況が続けば当然、若い人たちも路上に出てくるだろう」と危惧した。

厚労省の「ホームレスの実態に関する全国調査結果」によると、路上生活者(ホームレス)の数は、平成24年1月で9576人。近年は減少の一途をたどり、15年の調査開始以来初めて1万人を割った。しかし、佐野さんは「現場では減少している感覚はない。見えにくくなっているだけ」と語る。

職を失ってから路上に出るまでに受けられる支援は、主に失業手当と生活保護。今年に入り生活保護費の不正受給が大きく報じられると、生活保護に対するバッシングが強まった。だが、他の先進国と比較して生活保護の利用率は決して高くない。受給資格がある人で実際に利用している人の割合は2割弱(22年)。ドイツは6割以上、フランスは約9割の人が利用している。日本では、本当に必要な人が受給できていないのが現状だ。

日本弁護士連合会が8月に開いたシンポジウムでは、尾藤廣喜・弁護士が「ドイツではせっかくある(生活保護の)制度を利用してもらうために、失業手当が終わると、『第2の失業手当』という名称で保障を受けやすくしている」と紹介した。

佐野さんは7月初旬、ドイツを訪れ、ビッグイシューと同様なストリートペーパーで生計を立てている元路上生活者から話を聞き、「ドイツは働く意欲が持てるようなシステムになっていると感じた」と話す。収入が増えれば保護から外れるが、収入が減ると再び保護される。日本では、保護からいったん外れると再受給は難しい。

「社会がいつでも保障してくれる。安心してチャレンジできる。このような社会であれば、日本の路上生活者も激減するだろうし、そもそも、私たちが生きやすい社会になるのでは」と佐野さん。社会システムの根本から問い直すことを訴える。

弱者に厳しい日本の社会

アメリカのある大手調査機関が、アメリカや日本など47カ国で、自力で生活できない人を支える責任が政府にあるかについて調査した結果、「まったく思わない」「そうは思わない」との回答が日本では約38%を占め、47カ国中トップだった。

アメリカは約28%、イギリスやフランスは1桁で、日本が社会的弱者に厳しい社会であることが浮き彫りになった形だが、その中で貧困にあえぐ多くの人たちが「自己責任論」の前で沈黙を強いられている。

反貧困ネットワーク事務局長、NPO法人自立生活サポートセンター・もやい事務局長の湯浅誠さん(44)は、このような"世論"と闘いながら、稼働年齢層で高齢福祉、障害福祉といったこれまでの福祉の制度の枠に入らなかった人たちを支援する制度(生活支援戦略)づくりに取り組んでいる。また宗教者とも協力しながらホームレス支援の活動を行っている。

失業者を最初に支える第1のセーフティーネットは雇用保険。しかしバブル経済崩壊後の長引く不況やリーマンショックの影響で、日本企業の雇用形態は正規雇用から非正規雇用へとシフト。その結果、雇用保険に加入していない、あるいは加入させてもらえない労働者が増え、家族などの支えがない場合には、失業すると失業給付も受けられず公的扶助の生活保護しか頼るものがないことになるが、今、その受給者への風当たりが強くなっている。

しが生活支援者ネットが、大津市の滋賀弁護士会館で開いたシンポジウムで講演した湯浅さんは「生活支援戦略の話は生活保護とセットで論議され、生活保護の問題がクローズアップされる中で埋没してしまっている」と、生活保護バッシングが本当に支援を必要としている人たちの存在を見えにくくしていることを危惧。

そして「現役の間は自力で生活するのが当然で社会保障は高齢者や障害者のためのものというのが日本の常識。このような世論を相手にやっていくのは困難。だからこそ、いろんな人たちが意見の相違を超えて話ができる条件をつくる必要がある。そうしなければ何もできない」と語り、無縁社会といわれる今の日本に多様な人々を結び付ける横串としての"縁"を築くことが課題とした。