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時流ワイド

スピリチュアルの世界(3/4ページ)

2013年1月26日付 中外日報

パワスポ信仰心の醸成につなげたい

恋の願いを書いた特徴的な丸い絵馬が鈴なりになる今戸神社(東京・浅草)
恋の願いを書いた特徴的な丸い絵馬が鈴なりになる今戸神社(東京・浅草)

ここ数年、スピリチュアルより関心が高まっているのがパワースポットだ。東京・大手町のビジネス街に、「将門塚」はひっそりとたたずむ。平安時代の武将、平将門の首を祀る塚は、かつて心霊スポットとして紹介されることが多かった。京都から首が飛んで帰ってきたとの伝説から、無事に帰れるとの俗信も生まれた。近くの会社に勤める女性は「転勤で大阪に3年いたが、無事戻ったのでお礼参りに来た」。仕事の合間に参拝したそうだ。

「パワースポット」という単語がいつから使われだしたか定かでないが、『現代用語の基礎知識1986』にはすでに項目が立っている。「宇宙の精気や霊力の凝縮する聖地」と説明され、天河大弁財天社(奈良県天川村)が具体例として挙がる。

東京・浅草にある今戸神社は縁結びに特別な力があるとして、頻繁にテレビや雑誌に取り上げられる。今戸は招き猫発祥の地といわれ、「なぎちゃん・なみちゃん」と名付けられた雌雄一対の招き猫が描かれた絵馬が鈴なりになっている。平日の昼間にもかかわらず多くの若い女性が参詣に来ていた。

「もっときちんとお化粧しなきゃ駄目よ」。市野隆利宮司の妻、恵子さんの声が境内に響く。お守りなどを頒布しながら、恋愛や結婚の相談に乗っているのだ。同社の参拝者は7割が女性。平成20年からは同神社主催の「縁結び会」を始め、すでに40組が成婚した。参拝していた30歳代の女性は「運勢とか見えないものはどうしようもないから神様に頼りたくなる。雰囲気が厳かだとパワーをもらったような気になる」と話す。

東京・神楽坂の日蓮宗善國寺もパワースポットとされる。2人連れで参詣していた20歳代の女性は、「友達がお参りしたら仕事がうまくいくようになったと言ってたから来てみた」。信仰する宗教を尋ねてみると、友人と顔を見合わせ「多神教?」と笑う。パワースポットにお参りしても、それを宗教とは考えていなかったという。

嶋田堯嗣住職は「結界を張った祈祷の場など、法力・経力にあふれる寺院はパワースポットの原点」と話す。「歴史ある社寺にカタカナ語はそぐわない」としながらも、「入り口が広がるのは良いこと。そこから信仰心を醸成するよう、お寺や神社の者がきちんと対応していかねばならない」と気を引き締める。

江戸時代にも「蟻の熊野詣」と呼ばれるほど人が連なった熊野参詣や、伊勢の神宮へのおかげ参りなど、社寺参拝のブームはあった。だが今のパワースポット・ブームには寺社側も戸惑いがある。

パワースポットとして有名な「清正井」は、明治神宮(東京都渋谷区)の境内にある。携帯電話の待ち受け画面にすると運気が上がるとして、一時は何時間も待つ行列ができた。だが清正井は明治神宮にとって信仰対象ではない。本殿を参拝せず、清正井だけ訪れる人もおり、『神社新報』(平成22年11月2日付)は「『パワースポット』といふ言葉に惑はされた」と批判的に論じた。

國學院大の黒﨑浩行・准教授は「ブームによる経済的側面は無視できないが、神社の尊厳や宗教文化の意義が見過ごされる恐れもある」と語る。

「オウム事件をきっかけに宗教的志向がメディアから排除され、『宗教』を『スピリチュアル』と言い換えてブームが起きた。パワースポット・ブームもその動きの上にある」と分析するのは宗教学者の岡本亮輔・慶応大講師。「既存宗教の組織やイメージから離れ、個人が自分なりに信仰対象とつながろうとする近年の傾向に、パワースポット・ブームがさおさしている」とみる。