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時流ワイド

スピリチュアルの世界(4/4ページ)

2013年1月26日付 中外日報

伝統宗教も接点を 島薗進・東京大教授に聞く

従来の宗教観では捉えにくいスピリチュアル・ブームやパワースポット・ブームは、宗教学からはどう見えるのか。島薗進・東京大教授は、西洋文明の「宗教」概念では理解しにくいが、日本の伝統的な要素もあり、必ずしも異質なものではないと話す。

宗教にも集団から個人化の流れがあると語る島薗教授
宗教にも集団から個人化の流れがあると語る島薗教授

ブームは宗教学的にどう位置付けられますか。

これらも広い意味では宗教と言えるのでしょうが、西洋文明の「宗教」概念では捉えられないものを含んでいます。必ずしも教義や組織が伴うわけではなく、新しい形態がさまざまにあり、私は「新霊性文化」と呼んでいます。

この動きが顕著になったのは1970年代のニューエイジと呼ばれる現象です。その影響を受けた世代が80年代後半から90年代前半にかけてオカルトブームの担い手となりました。転機は95年のオウム事件で、ノストラダムスの予言の99年を過ぎてから沈静化しました。その後、江原啓之氏らが霊能的なものをスピリチュアル・カウンセラーと称して新しく展開したのです。

現在のパワースポット・ブームもこの大きな流れの中にあり、いろいろな形で現れるブームは、それぞれに時代性が反映されていると思います。

伝統的な宗教との違いは?

従来の宗教は集団共同体が基盤にあり、その上で機能してきました。しかし世の中が集団から個人化へと流れ、それにつれて凝集性の強い集団に人が集まりにくくなり、宗教も個人化し多面性が増しました。

ただ檀家制度は近世に始まり、新宗教は近代に生まれたもので、集団共同体を基盤とする宗教も、より大きな視点からはそれほど古いものではありません。今のブームはある意味、中世的な「ゆるい共同体」に戻っているとも言えるかもしれません。

この動きに伝統宗教はどう関わっていけるでしょうか。

今までのような、血縁的・地縁的な緊密な関係を再生させるのが難しい状況では、ブームとの接点が必要です。それは広義のスピリチュアリティにも関わるもので、医療やボランティアなどの社会奉仕的なものから滝行まで、個人の体験的要素が重要になるでしょう。

また日本では場の精神性が尊ばれます。世界遺産になって新たに多くの人が訪れている熊野は、平安時代から聖地でした。新宗教でも、京都府綾部市の大本本部など、聖地として巨大なパワースポットをつくってきました。明治神宮も新たにつくったパワースポットと言えます。

現在注目を集めるパワースポットに、こういった巨大さは必要とされておらず、個人の好みに即した小さなものという見方ができます。「行」や巡礼・参詣といった伝統と、個々の求めに応じる多様な体験的要素を、うまくマッチさせることができれば伝統宗教に人は引き付けられるのだと思います。