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時流ワイド

進む文化財デジタル化(4/5ページ)

2013年2月14日付 中外日報

流出、権利紛争の懸念も デジタル化に警鐘

だが、安易な画像保存に警鐘を鳴らす識者もいる。『日本文化の模倣と創造 オリジナリティとは何か』(角川選書)を著した、国際日本文化研究センターの山田奨治教授は文化財のデジタル化の利点を認めながらも、「例えば障壁画などを高精細な複製品で置き換えた場合、置き換えられた文化財は収蔵庫に入り、参拝者からは遠ざけられてしまう」と話す。

障壁画は、その場所で見ることを前提に絵師が描いたものであり、寺院から取り外されてしまっては、作品の意味と価値が変容してしまうのではないかと疑問を投げ掛ける。

奈良・高松塚古墳では定期点検がおろそかになったせいで、雨水の浸入やカビの発生などで国宝の壁画が退色・変色した例がある。収蔵庫に収めたからといって、安心して保存管理に目が行き渡らなくなっては本末転倒だ。

また、懸念されるのがデータの流出。技術の発達で高精細な画像が得られることになった半面、いったん流出してしまえば収拾がつかなくなってしまう。

歴史的な文化財の場合、著作権はすでに失われており、例えば寺院など文化財の所有者は撮影されたデジタル画像の使用を認める権利を持たない。パブリシティー権などを盾に、所有者が使用を制限するよう求めることも可能だが、この分野の法制度はいまだ整備されていない。今後、所有者と使用者の間でトラブルが多発することも懸念される。

共生国際特許事務所の佐藤知予子氏は「文化財をデジタル化する際、所有者の権利を守る契約をきちんと結ぶことが大切。データの権利は誰が持つのか、どういう条件で使用を認めるのか、改作を認めるのかなどを事前に協議しなければならない」と話す。

宗教的な礼拝対象を複製するということ自体に違和感を覚えたり、意図しない形で商業利用されることを危惧し、寺社関係者の中には文化財のデジタル化に関して抵抗感があることも確かだが、文化財をデジタルアーカイブ化しようという動きはますます盛んになることが予想される。功罪含め、文化財を所有する寺社関係者も対応する準備を整えることが必要となりそうだ。