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時流ワイド

進む文化財デジタル化(5/5ページ)

2013年2月14日付 中外日報

京都大大学院 井手亜里教授に聞く

関心が高まる文化財のデジタルアーカイブ化。大型スキャナーなど光学機器開発に取り組む京都大大学院工学研究科の井手亜里教授(61)は、世界文化遺産・二条城障壁画の保存に携わるなど、最初期から文化財のデジタル化に関わってきた第一人者。取り組みの広がりやデジタル化の利点、問題点を聞いた。

図書館のような組織が必要

デジタル化の利点と問題点を説明する京都大の井手亜里教授
デジタル化の利点と問題点を説明する京都大の井手亜里教授

文化財をデジタルデータで保存しようという動きが高まっています。

日本でのデジタル保存は、20年ほど前から機運が高まってきました。自治体が事業に予算をつけ始め、平成8年には東京大でデジタルミュージアムが発足しています。東日本大震災でも多くの文化財が傷つき、失われたため、保存に対する意識は思った以上に高まっていると感じられます。

デジタル保存の利点は。

保全が難しい文化財を保護するため、オリジナルを管理の行き届いた場所に収蔵し、代わりに複製を公開することが選択肢の一つとして考えられます。京都の大徳寺塔頭・聚光院にある、狩野松栄・永徳親子が描いたふすま絵を6年前にデジタル保存し、複製を利用して元の空間が再現されました。オリジナルは京都国立博物館で保管されています。

状態が悪く公開できなかった物でも、デジタルデータを活用することで国内外の多くの人が観賞できるようになります。また、細部を詳しく観察することができるので、絵画の場合だと、表現技法や画材の分析が可能になります。

今後の展望は。

この5年でデジタル化技術は大きく進歩し、取得されるデータの画素数は100倍程度になり、一方で作業に必要な時間は10分の1になりました。画材や紙の質感を再現することもできます。5年前に数千万円かかった仕事も、今では1千万円以下でできます。出版や展示、複製の制作、パブリシティー権の管理で十分に商業活動が成立します。資金調達や技術提供の仕組みさえ整えば、デジタル保存の動きはますます盛んになるでしょう。

デジタル化が進めば、外国人でも日本の宗教文化にアクセスすることが可能になります。そうすれば、海外に発信する上で、欠かせない手段となることが期待されます。ただ保存しやすいとはいえ、一個人では100年も維持できません。デジタルデータを保管する、図書館のような施設や組織が必要でしょう。

問題点はないのですか。

例えば勝手に私の写真が撮られて公開されれば、肖像権を盾に訴えることができますが、仏像の場合はどうでしょう。所有者の権利を守る仕組みはまだまだ不十分です。またデータは加工しやすいため、所有者が意図しなかった使われ方をされる危険もあります。所有者と撮像者、使用者の間でしっかり契約を結ぶべきでしょう。今後、トラブルは増加していくと考えられます。

さらに仏像などの場合、いくら正確に再現した複製であっても、礼拝対象としてはなじみません。所有者の意向が的確に取り入れられるよう、線引きをしっかりすべきでしょう。