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トップ> 時流ワイドリスト> 差別と芸能、宗教の関わり 直聞インタビュー 村崎太郎さん
時流ワイド

差別と芸能、宗教の関わり
    直聞インタビュー 猿まわし師 村崎太郎さん(4/5ページ)

2013年3月23日付 中外日報

命の尊さ実感された被災地の方々に学ぶ

猿と長年暮らしていて人間の見方が変わりましたか。

人間、そんなに偉いのか、という気は起きてきますね。確かに猿の知能は人間ほどではありませんし、技術も持っていません。でも人を楽しませる力を持っています。人はあらゆるものから力を頂いて生きています。そういった存在に感謝の気持ちを忘れてはならないと思います。

猿は本来、四足歩行の動物です。猿まわしでは2本足で立っていますが、すごく頑張って立っているんです。子どもたちにそう話すと驚くのですが、生きとし生けるものに感謝する心を抱くようになれば、猿に関する知識も持てると思います。

他者に感謝して関心を持てば、その相手への理解も深まっていきます。虐待やいじめといった問題も同じです。子どもたちに他者に対する感謝の気持ち、そして命の大切さを伝えていきたいですね。

東日本大震災の被災地をたびたび慰問していますね。

被災地で100回以上の公演を行いました。そこで一人の車いすの女性に出会ったのですが、自分がいたらみんなの邪魔になる、迷惑かけるから死のうと本気で考えたそうです。死んだら楽になれるという気になった被災者の方は他にもいらっしゃると思います。

過去には差別で苦しみ自ら死を選んだ人がたくさんいました。私も死を考えた時があります。ですが、生きていて良かった、生きているからこそ喜びを感じ感動することができた、と思えることが必ずあるはずです。

車いすの女性は、猿まわしを見て笑って、元気が出たと話してくれました。すごくうれしかったです。芸しかできない自分ですが、自分にもできることがあるんだと思えました。

被災地に行って思うのは、被災した方々に学ぶことが多いということです。大変苦しい中、皆さん本当によく頑張っておられます。今の日本であれほど頑張れている人がどれだけいるでしょうか。家族や友人を失った方々は命があるだけでありがたいとよく話されます。日本が復活するには、命の尊さを実感されている被災地の方々に学ばねばなりません。

問題にきちんと向き合い語り合える社会に

差別解消に向けて何をしていきますか。

被差別部落の貧困の再生産は、今も完全に解消されたわけではありません。今も差別と貧困からはい上がれずにいる人がたくさんいます。私は多くの方のおかげでここまで生きてこられましたが、受けたご恩を他の人にお返ししていかなければと考えています。

それには、被差別部落に生まれ貧困から抜け出せた自分をさらけ出すことです。それが今も苦しんでいる人たちの希望となれば、うれしいですね。

差別はなくなると思いますか。

人はどうしても差別をしてしまう弱い存在だと思います。私にしても差別されながら、他の人を差別していたことがあります。たとえ一つの差別がなくなったとしても、また別の差別が新たに生まれてくるでしょう。

ですから、まずは差別による社会的障害を一つ一つ取り除いていくことが今の課題です。そして、人間は差別をしてしまう生き物なのだと認めた上で、差別しない境地を求める人を増やしていくことが必要でしょう。

部落問題は忘れ去られようとしているのだから、触れずにいた方がいいと考える人もいます。でも問題にふたをすることで解決したとするのではなく、みんながちゃんと理解することが重要だと思います。自分は被差別部落出身だと公表できて、差別問題をきちんと語り合える社会が理想です。

部落問題が、人権問題の"文化遺産"になればいいですね。ひどい差別であるにもかかわらず解決できないことがあったんだと。この文化遺産が差別を正しく理解するきっかけとなり、より良い社会をつくるにはどうすればいいか考える教材となることを願っています。