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時流ワイド

自死対策 宗教者に期待(3/5ページ)

2013年4月11日付 中外日報

行政の支援を補完する

「心の健康フェスティバル」での自殺対策コーナー(東京都足立区)
「心の健康フェスティバル」での自殺対策コーナー(東京都足立区)
ゲートキーパー 悩んでいる人に気付き、声を掛け、話を聞いて、必要な支援につなげ、見守る人のこと。地域や職場、教育などの分野で自死のサインに気付き、見守りを行い、専門相談機関による相談へつなぐ役割が期待される人材として各自治体などが養成研修を展開している。

行政レベルでも近年、自死問題への取り組みが浸透しつつある。平成18年の自殺対策基本法施行後、相談窓口の開設やゲートキーパーの養成、3月を「自殺対策強化月間」と定めての啓発活動実施などが各地で広がる。

先進的な取り組みを続ける自治体の一つが東京都足立区だ。

同区では18年に区内の自死者数が東京23区内でワーストワンになった。これをきっかけに、NPO法人自殺対策支援センター・ライフリンク(東京都千代田区)と協定を結び、20年から「こころといのちの相談支援事業」を立ち上げた。

同年からゲートキーパー養成研修を開催。当初は窓口担当の区職員から始め、現在は全職員必修研修となった。さらに受講者を職員以外の民生委員、児童委員や弁護士会などにも拡大。研修を受け、職員の意識も「自死は誰にでも身近に起こり得る」と感じるように変化した。

ライフリンクの統計調査で「自殺の危機経路」は職場や家族の人間関係の悪化、失業や生活苦、うつ病といった病気など複数の要因からなることが分かっている。

自死念慮者は複数の問題を抱え、一つの相談窓口だけで問題が解決しない。相談者の同意を得て、相談内容を紹介窓口や担当部署で共有できる「つなぐ」シートの導入や、法律の専門家や保健師などが1カ所に集い、無料で相談に乗る「雇用・生活・こころと法律の総合相談会」も開催。24年から自死念慮のある区民に継続的な寄り添い支援を行うパーソナルサポーター制度も導入した。医療機関や種々の相談機関、NPO団体などとのネットワーク強化にも努める。

行政の取り組みの現場からは宗教界への期待の声も聞こえる。

足立区保健所の馬場優子・こころといのち支援担当課長(47)は、宗教者に「行政は平日の支援で、線引きもあり、特別なサービスが難しい部分もある。行政のやりづらい部分へ宗教者が一歩前へ出てやっていただけるとありがたい」と望む。

例えば「土日に見守ってくださる。死にたい気持ちにとらわれた人は24時間苦しんでいる。こんなに聞いてもらえる、寄り添ってもらえると感じることで、そこから主体的に問題が解決できるようになる」と駆け込み寺的な役割を願う。

東京都中央区では自死未遂者対策として25年度から区内の救急病院と協力し、今後の検討資料とするための予備調査を行う。

和田哲明・中央区保健所長(63)は「受け皿がないと対策が進まない。幅広い形で未遂者に対してどう対応していくかが重要なところ」と宗教者を含む民間の協力の必要性を指摘する。

東京都での取り組みのほか、京都市が浄土真宗本願寺派の僧侶を中心に活動する京都自死・自殺相談センターへの委託を通して、宗教者を対象にした「ゲートキーパー養成講座」を今年2月に開講した事例も注目される。

自死予防や自死遺族・自死未遂者支援を行っている「こころのカフェ きょうと」(京都市西京区)代表の石倉紘子さん(69)は、近年の自死者の減少傾向は国の対策と民間団体の取り組みが一定の成果を挙げた結果とみる。

「自死はさまざまな社会的背景抜きには起こり得ず、自死対策は何か一つをやればいいというものではない。教育や医療、福祉、産業などさまざまな分野が有機的に連携していくことが必要」と強調し、「常に命や魂の問題と向き合う」宗教者の存在も大きい、と話す。

石倉さん自身、東日本大震災の被災地支援で偶然、ボランティアセンターが設置される本願寺派の仙台別院(仙台市)に寝泊まりし、寺院が重要な社会資源だと実感したという。