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時流ワイド

「出生前診断」アンケート(2/5ページ)

2013年5月30日付 中外日報

胎児の権利と 女性の権利と

出生前診断アンケートグラフ

中絶の可否、回答を二分

新型出生前診断の実施状況が5月10日、札幌市での日本産科婦人科学会で発表され、検査を受けた人は4月1日からの1カ月間で441人だったことが報道された。検査結果が判明した257人中、胎児の染色体異常が疑われる「陽性」判定は9人。確定診断のための羊水検査を6人が受け、結果が出た2人はダウン症と診断されたという。新型出生前診断の精度は高いが結果の確定には羊水検査が必要とされており、陽性判定の人が羊水検査を受けて「陰性」となるケースが初めて出たことが今月に入って報道されている。

出生前診断についての賛否を聞く問1は、B「中絶につながるのであれば検査はしない方がよい」が19人で、C「遺伝カウンセリングなど環境が整えられれば検査は認めても良く、その上で場合によっては中絶も認められる」が15人。A「検査は一切すべきではない」は4人、D「その他。分からない」は6人だった。

Bの選択者からは、中絶は「胎児の生まれる権利」の否定であるなどの理由で原則的に反対との立場が示された。

「仏教ではシビ王の物語が示すように、その掛け替えのない尊い生命の存在を、『あらゆるいのちは平等である』と説きます。いかなる生命もその存在に意味を持っています。誕生前に人為的に命を奪う妊娠中絶は自然の摂理に反する行為であり、五戒の最初に不殺生戒を置く仏教では元より犯罪行為」(日野英宣・真宗佛光寺派前総務)

「胎児を自立した一個の生命体と見るならば、中絶・堕胎は、胎児に対する殺人の行為である。経済的理由であれ、新生児となるべき胎児の健康上の理由であれ、中絶は、胎児自身の『生まれる権利』(出生権、生存欲望)を否定すること」(渡辺順一・金光教羽曳野教会教会長)

これに対し、条件付きで検査・中絶を可とするCの選択者からは、中絶を認めない立場に同調しつつも、高齢出産のケースなどで親の選択としてはやむを得ないなど、事情によってはこうした選択を除外できないとする考え方が見られた。

「生命倫理に関する多くのテーマに共通することと考えるが、一般論で、二分化できない問題こそ、起こり得る具体的な事例について様々な場面を想定して、慎重かつ真剣に議論を重ねることが重要。その結果、『場合によっては中絶も認められる』との選択肢をあらかじめ外すべきではない」(黒住宗道・黒住教副教主)

「安易な中絶は慎むべきだが、高齢出産のリスクは軽減すべき。染色体異常が見つかれば、夫婦がよく相談した上で中絶するのは止むを得ない」(茂松性典・天台宗宝林寺住職)

D「分からない」の選択者にも「宗教者としては中絶は避けるべきだと思いますが、無責任なことも言えません」(小籔実英・高野山真言宗観音寺住職)と、同様の立場を示す答えが多かった。

「現代社会においては『寛容』こそ最大の徳目である」とCを選んだ川上直哉・日本基督教団仙台市民教会牧師は、遺伝カウンセリングの整備が重要として「①中絶賛成と反対の両者の側から意見をそれぞれ聞く機会を整備する②WHOの健康の定義(案)に従って、肉体・心理・社会・宗教の四分野から、助言を聞く機会を整備する」ことを提言する。

「障害者排除」を危惧

出生前診断の背景にある「障害者排除の思想」に警鐘を鳴らし、障害者を養育するための国家・社会の支援体制整備を説く意見はB、Cの選択者に共通して見られた。

「ダウン症など染色体異常の人たちも家族も穏やかに生活できるような国家的な援助が望まれる」(湯澤宥広・真言宗豊山派宝蔵寺住職)

「たとえ障害がある子が生まれてきても、それを絶対に差別しないという社会環境を整えることが先決。マイナスの結果が出たら、堕胎や中絶して産まない方が良いという考えが少しでもまかり通るならば、今までに生まれてきた障害のある人の人権を著しく蹂躙し、より苦しみを背負わせることになる」(野下千年・長崎県宗教者懇話会会長、カトリック司祭)

「現代日本の現状では、障害児排除のための出生前診断であり、障害児の養育に対する社会のサポート体制の充実や人々の理解を先行させるべきである。障害児が生まれても安心して育てられる環境を、ハードも文化も推し進めるべきでしょう」(西原祐治・浄土真宗本願寺派西方寺住職)

A「検査は一切すべきではない」を選択した藤本淨彦・浄土宗総合研究所所長は「人の『いのち』は条件付きではなくて絶対的な賜りものであることをゆるがせにはできない」と述べる。