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時流ワイド

「政教分離」に直面する復興(2/6ページ)

2013年6月27日付 中外日報

「信教の自由」を保障するはずが…
復興に立ちはだかる政教分離の壁

東日本大震災では数多くの宗教者が支援活動に従事した。がれきの片付け、泥かきなど一般的な活動の他に、遺体安置所での読経、傾聴、心のケアといった専門性を生かす活動に積極的に取り組む宗教者も多かったが、その際、行政サイドからの一定の制約にぶつかることもまれではなかった。この「政教分離」の壁は、いま、復興という大きな課題に取り組む宗教者の前にも立ちはだかっている。(津村恵史、丹治隆宏)

ケース1 宗教施設の区画は存在せず

仙台市若林区の荒浜地区にある浄土宗浄土寺は、津波で壊滅的被害を被った。本堂などが全壊し、墓石は押し倒され、泥に埋まった。140人を超える檀信徒が犠牲になった。中澤秀宣住職は公的支援を諦め自力での寺再建を目指すが、震災から2年が過ぎても、寺を再建する場所が決まらずにいる。

震災直後、中澤住職は自動車に法衣など一式を積んで、携帯電話で連絡を取りながら回向に走り回った。檀信徒から津波で破壊された墓地の再建について聞かれることも多く、処理について市に相談した。「墓地は市では処理できない。地域は危険区域になるので、建物は建てられない」という答えが返ってきた。その年の12月、寺がある荒浜地区一帯は住居の建築が制限される災害危険区域に指定された。

宗教活動の拠点となる寺の再生を目指し、昨年2月に若林区役所の許可を得て、津波で伽藍が流された跡地に寺務や簡単な法要を営むことができるプレハブの仮本堂を建てた。現在住んでいる見なし仮設から自動車で約20分かけて通っている。

ただし、この土地で本格的な本堂等の建設は許可されないため、危険区域外で寺を再建する必要がある。仙台市では防災集団移転促進事業が進められ、住民たちの落ち着き先も決まりつつあるが、浄土寺は檀信徒と一緒に移ることはできない。宗教施設は事業対象に含まれないためだ。

昨年6月から始まった同事業で、寺がある荒浜地区などは移転促進区域に指定された。移転先として13の地区が用意されたが、市の移転推進課によれば「寺などの宗教施設は、防災集団移転促進事業のそもそもの目的ではない。あくまでも住宅が対象になる」という。

同事業では新たに住宅を建てるための金融機関からの借入金の利子相当額や引っ越し費用を補助し、さらに建物が建っていた跡地を市が買い取ることで住民の移転を支援する。

前者の補助の対象外である宗教施設は、跡地買い取りの支援も受けられない。買い取りは「宅地」と「農地」に限られ、「境内地」や「墓地」は除外されているためだ。

仙台市移転推進課は「政教分離の原則があり、仙台市では神社、寺など宗教施設への支援は行えない」と説明する。

移転先の地区には公民館や公園など公共施設が整備される場合もあるが、寺社や寺が移転することはないという。そもそも宗教施設のための区画は存在しないのだ。

いま、中澤住職は、再建のための土地取得に向けて奮闘中。農地を取得し境内地に転用することを考え、市などと交渉を続けている。

政教分離とは普遍的に尊重される人権としての「信教の自由」を制度的に保障するために設けられている原則だ。国により政教分離の性格はさまざまで、国教制度をとる国にも「信教の自由」を保障する広義の政教分離を認める考え方もある。