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時流ワイド

「政教分離」に直面する復興(4/6ページ)

2013年6月27日付 中外日報

ケース2 住民からの要望で墓石処理

がれき撤去が行われた閖上地区の墓地。基礎とカロートだけが残された
がれき撤去が行われた閖上地区の墓地。基礎とカロートだけが残された

同様に政教分離の制約を強く意識した対応だが、宮城県名取市の事例は、行政側の積極的な問題意識と細かな配慮が感じられる。

同市では行政が寺の墓地の「がれき撤去」を行うことで、結果として津波被害を受けた墓地が整理された。

倒された墓石が折り重なるなどして、墓地の修復に重機は不可欠。寺院墓地の修復には多額の費用が必要となる。被災地では、檀信徒に頼ることができず、行政の支援もなく自力での修復に苦慮する寺院が多い。

同市閖上地区にある寺院から「寺だけでは対応できない」という声を受けた市は、一昨年6月から、政教分離の制約のもとでも可能な復興支援の在り方を探った。

中心となったクリーン対策課の木村敏課長は「宗教法人ではなく、住民としての寺院から処理を求められたというスタンスで、あくまでもがれき撤去として取り組んだ」と話す。

これにより墓石の処理は、国から補助金が出る災害等廃棄物処理事業として実施することができた。寺院住職や役員との協議の席では、宗教団体への支援ではないということの周知徹底を図った。

一昨年11月から年末までの間に処理された墓石は1200基を超えた。一部からは墓石の処理を「石材の専門業者に依頼しては」という声もあったが、「墓ではなく、がれき」という前提があるため、災害廃棄物処理に携わるような土木業者に依頼した。

作業に当たった業者は墓石であることを十分配慮し、1基ずつ毛布にくるみ、市の所有地へと移動した。倒れた墓石が取り除かれることで、安全に収骨できるようになった。

寺院との話し合いでは、津波で流された過去帳を修復するためには墓石から名前を拾うしかないとの声も出ていたが、墓の棹石は五十音順に並べられ、法名などが読み取れるようにされた。

市有地に移動された墓石は昨年5月末まで保存され、希望する檀信徒は引き取ることができた。残ったものは粉砕処理され保管されているが、被災した寺院の土地がかさ上げされる場合に使用することも検討されている。

津波がもたらした土砂で墓が埋まってしまった市内北釜地区の寺院でも、災害等廃棄物処理事業として「津波堆積物の除去」が行われ、墓石を掘り起こした。墓地での「がれき撤去」について、市には苦情めいたものは寄せられなかった。「市民の心を落ち着かせた」との意見や、クリスチャンの市議会議員からも評価の声が上がった。

この問題に取り組んだ木村課長は仙台市にある真宗大谷派宝林寺の副住職。政教分離に細心の注意を払ってきただけに、市民が好意的に受け入れたことに胸をなでおろしている。