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時流ワイド

「政教分離」に直面する復興(5/6ページ)

2013年6月27日付 中外日報

実践を通して適切な関係を

「大規模自然災害と宗教法の課題」をテーマに昨年11月、京都大で開かれたシンポジウムでは、公共空間での犠牲者追悼等に対する震災後の行政側規制とともに、名取市の事例を含む宗教施設の復興の問題などが報告された。

パネリストの一人、臨済宗妙心寺派福聚寺(福島県)住職で作家の玄侑宗久氏は東日本大震災復興構想会議の委員も務めたが、中越大震災の復興基金で神社等の再建支援が行われた例などを挙げ、東日本大震災の復興基金や、宗教界を含む各方面から寄付を受けた被災各県が、避難所として地域で大きな役割を果たした宗教施設の修理再建支援を行っていないことに疑問を表明。「特定の宗派ではなく、被災した全ての宗教施設を支援するのが政教分離に抵触するとは思えない」と力説するとともに、浄土寺の例のような、地域再建計画における寺院の無視についても危惧を述べ、「東北では寺の役割は重い。コミュニティーの中心として、街づくり計画の中に神社仏閣を位置付けてもらいたいと思う」と訴えた。

これについて百地章・日本大教授は「地域復興は世俗目的。宗教施設だからといって除外するのは逆に差別になる。対等に扱うべきだ」と強調。

日弁連災害復興支援委員会副委員長の津久井進弁護士は「地方自治体の行政能力低下が政教分離の形式的適用という事態を招いている」と分析した。

こうした議論の背景として、福島復興再生基本計画をめぐる復興庁と日宗連の意見の応酬(別項)が存在することを理解しておく必要がある。復興庁の「補足」を見る限り、立場の相違は明らかだが、認識の隔たりは小さくなったように思われる。復興支援の現場での具体的な効果はまだ指摘されていないが……。

いま、東日本大震災の経験を踏まえ、近い将来に予想される大規模災害に備え、行政側が寺院や神社の協力を得て、緊急避難の計画を策定する動きがある。年間5千万人の観光客を受け入れる京都市は嵐山や東山など観光地の大規模災害時の避難誘導計画の作成に取り組み、清水寺をはじめとした京都を代表する社寺に参加を求めて協議会を立ち上げた。

京都はかつて古都税問題で京都仏教会と市が対立した歴史がある。基本的に政教分離には敏感な土地だが、行政が宗教界と手を携えて進めている事業は他にも多い。政教分離原則の現実的な運用については、具体的な経験を重ねた分だけ、京都は先進的といえるかもしれない。

憲法改正草案論議の中で第20条3項の禁止条項を緩和する提案もある。これまで見てきたように、東日本大震災の被災地でも政教分離の運用に関わる多くの疑問が浮上し、20条改正論にも多少追い風として働いている。

政教分離の在り方に関しては今後、さまざまな立場から検討が加えられるべきだろう。ただし、浮上してきた疑問は、政教のバランスを少なからず変化させる20条等の改正につなげるべきものかどうか、判断には今しばらく慎重であるべきだ。「信教の自由」の制度的保障としての性格をまず重視して、議論を深めてゆく必要がある。

その議論は、ここに挙げた名取市や京都市の例のように、政教問題を自覚的に視野に入れて目の前の課題に取り組む実践の積み重ねが前提となる。政教問題が問答無用の壁にならないよう、「政」「教」の双方が用心しなければならない。