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時流ワイド

平和に向け動く宗教者(3/4ページ)

2013年7月30日付 中外日報

WCRP国際委員会・副事務総長 世界の宗教指導者を結ぶ杉野恭一氏に聞く

宗教協力、外交に生かす

講演する杉野氏
講演する杉野氏
■WCRP(世界宗教者平和会議)は立正佼成会の庭野日敬開祖の提唱で1970年に発足。国際的な宗教協力による世界平和の構築を目指して活動している。日本委員会など世界各国に70以上の委員会が組織されている。

WCRPで国際委員会の副事務総長を務めイラク、シリア、スリランカなどの紛争地帯で、現地の諸宗教の指導者を集め、対話と協力の母体づくりに尽力している杉野氏に話を聞いた。

(行動志向型へ)

アメリカ国務省には、私も委員に加わっている「宗教と外交部会」が2010年に設置され、宗教の視点を外交に生かそうとしている。

日本政府も去年、超党派の議員へのWCRPの働き掛けによって、タイの宗教間協力計画にODA(政府開発援助)を拠出した。宗教協力は祈りや対話を基礎に、政府などとの具体的で行動志向型な協力へと発展している。

シリアでは、宗教指導者を通して関係各国の政治の意思決定者にコンタクトを取り、和平を呼び掛けた。また現地の宗教者への停戦の呼び掛けや水面下での調停、戦後の和解活動に向けて活動するなど、諸宗教間協力はダイナミックなものとなっている。

(活動と信仰)

私は立正佼成会の学林を出た。信仰から人間の尊厳を学び、難民支援と人権問題に取り組むため、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)に入った。しかし紛争を予防する社会の実現に取り組みたいとの思いから、異なる集団が信頼を醸成し、停戦や和平を呼び掛けることができる団体であるWCRPの事務局の一員となった。

難しい仲介・調停も多いが、常に携帯できる仏壇を持ち歩き、読経し、心を整えてから仕事に臨んでいる。命を懸けて和解に取り組む各地の宗教指導者と共に仕事をすることにより、感化を受け、自分の信仰を深め、霊的に成長することができている。

(現地の宗教者の手で)

現地の諸宗教の宗教者が自分たちの力で対話と協力の母体をつくり、われわれは一緒に社会を良くするための手伝いをする、という形式が重要。設立に際しての呼び掛けやネットワークの構築に力を注ぐが、本部が現地に支援をばらまくものではない。自分たちの力で維持・発展させる恒久的な組織づくりが求められている。

長く活動してきたWCRPには具体例が豊富で、現地に合ったノウハウを提供することができる。去年設立されたミャンマー委員会では、各国政府や財団から援助を受け子どもの保護などの事業計画が進行している。

(政治的な利害はなし)

日本は紛争地とは政治的な利害関係にない。現地の宗教指導者を迎え入れて対話の場を与えるという、大きくはないが誠実で地道な取り組みにふさわしい。日本の宗教に対して偶像崇拝という偏見や先入観を持つ宗教指導者も中にはいたが、それを解消し、良さを知らせることもできる。

(平和とはプロセス)

「一向に平和にならない」という意見を頂戴することがある。平和とは最終目標ではあるが、そこに向かうプロセスだとも考えている。イラクの宗教指導者が日本で対話を行ったことがある。意見の対立も大きかったが、共通の課題を探るうちに、戦争で傷ついた子どもの保護で合意が得られた。夕食で、ターバンを外すほどリラックスした指導者たちの姿を見て感動した。平和への道を歩む中で困難や喜びに直面するが、人々が一体となり、調和する瞬間がある。それこそが「平和」なのだ。