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時流ワイド

死刑存続風潮の中で(3/4ページ)

2013年8月22日付 中外日報

生命尊重説けるのは宗教者

「京都から死刑制度廃止をめざす弁護士の会」代表を務める堀和幸弁護士(62)は、これまでに6件の死刑求刑裁判に関わったことがある。このうち4件で死刑が確定。中でも印象に残るのは平成19年1月に起きた京都・神奈川親族連続殺人事件の被告になった松村恭造死刑囚だ。

事件は松村死刑囚が京都府長岡京市の伯母と神奈川県相模原市の大叔父を相次いで殺害し、現金数万円などを奪ったという概要。京都地裁は20年3月、強盗殺人罪を認定して死刑判決を下した。判決は一審で確定し、昨年8月に死刑が執行されている。享年31歳。

親族2人を殺害した凶悪事件だ。だが、それだけではない。裁判中は、反省の言葉はおろか「人殺しという大仕事を完遂した。自分で自分を褒めてあげたい」などと傍若無人な言動を繰り返した。そして死刑を願望し、控訴を自ら取り下げた。

ところが、一審判決から約1年後、堀弁護士は松村死刑囚から大阪拘置所に呼び出され、控訴審の再開を求められた。

裁判で他者に責任を転嫁するような発言を続けた松村死刑囚。拘置所でも堀弁護士を「死刑にならないような弁護をするべきだった」と責めた。だが、同弁護士は「生に対する意識が芽生えた」と感じ、「できるだけのことはやろう」と決意。控訴審の再開や恩赦を求めたり、再審の準備を進めた。

要望にはできるだけ応じた。死刑判決への抗議書提出や治療にミスがあったとの理由でかつて通院した病院への賠償を求める交渉も代行した。だが「先生(堀弁護士)が悪い」と身勝手な言動は改まらない。もう限界と22年6月に支援を断念した。

松村死刑囚は、常に傍若無人だったわけではない。「人に責任を転嫁しないと生きていけなかったのだろうか。いい時は好青年だったが、むらがあった。もしかしたら精神疾患があったのかもしれない」と話し、「死刑に対しても矛盾した気持ちだったのかもしれない」と振り返る。

昨年8月に死刑の執行を聞いた時は「死刑は殺人だと実感した。理屈ではない。死刑は刑罰ではなく殺人」と強く思ったという。

堀弁護士は「弁護士の会」を結成した昨年以降、全国16の教団・関連団体などが参画する「死刑を止めよう」宗教者ネットワーク(事務局=真宗大谷派・解放運動推進本部内)とも関わりができた。

弁護士の立場では法律論などの観点からの死刑批判になるが、生命の尊重を「理屈を超えた」観点から説けるのは宗教者だと考えている。

「少なくとも信者の人は、僧侶や牧師が説く『全ての生命は大切』という言葉を敬意を持って聞いている。帰依の心です。そういう気持ちにさせてくれる宗教者の存在には死刑制度廃止に対する、それなりの影響力があるのではないでしょうか」と期待している。