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時流ワイド

貧困とは、貧乏そして孤立
    直聞インタビュー 社会活動家 湯浅誠さん(3/4ページ)

2013年9月14日付 中外日報

生活保護に負のイメージ 子どもの貧困問題が深刻

「貧困問題をこのまま放置すれば社会全体が弱体化する」と危機感を募らせる湯浅誠氏
「貧困問題をこのまま放置すれば社会全体が弱体化する」と危機感を募らせる湯浅誠氏

1950年の施行以来初めて生活保護法が改定されようとしていますが、ここにも自己責任論の影響があるのでは。

2010年ごろに受給者が200万人を突破したころから生活保護に対する社会的関心が高まった。私はその以前からこの問題に関わり、北九州市で生活保護の申請を拒否された男性が餓死した事件を機に「一体どうなっているのか」と"大変だモード"で情報を発信し続けました。

それで結果的に少しは整備されたものもあったのですが、この2、3年の間に親が生活保護を受けているのに高額収入の子どもが扶養義務を果たしていないとか、生活保護を受けながら毎日パチンコに行っているなどの話が出てきて、「大変だ」というイメージが消されてしまったような状況になりました。

そういう生活保護に対する負のイメージ、意識が法改定の動きに反映しているわけです。私は生活保護費支給をより厳格化する法改定は好ましいとは思っていませんが、それがけしからんと言っても問題が動くわけではない。

「けしからん」と言った時に、相手が生活保護について思い描くイメージが「生活保護を受けながら働く意欲もなく毎日パチンコばかりしている人たち」では、同意してくれません。

現実に215万人の人たちが生活保護で命をつないでいて、そのうち約30万人は子どもたちです。この人たち一人一人には当然、顔があり、名前があるのだということを思い浮かべてもらうようにしなければなりません。

そのために、『はるまち』という、生活保護を受けながら一生懸命に生きている人たちの姿を紹介するための雑誌の創刊準備号を5月に発刊しました。

子どもたちの6人に1人が「貧困線」を下回る生活を送り、一人親世帯に限れば実に貧困率は5割を超えるというデータもあります。貧困世帯の17歳以下の子どもの貧困率がこれほどまでに高くなった理由は何なのでしょうか。

2006年と2009年に政府(厚生労働省の国民生活基礎調査)が発表した相対的貧困率があります。06年が15・7%、09年は16・0%で0・3ポイントの増加です。

ところが子どもの貧困率は06年が14・2%だったのに09年は15・7%で、1・5ポイントも増えています。

子どもの貧困率とは子育て世代の貧困率ですが、この世代の収入がガタガタと落ちてきて、二極化しています。これに対し税制や社会保険などで調整されていない。公的に格差是正が図られていないのです。租税の格差是正機能が極めて弱いという点では、日本はアメリカよりもひどい状態です。

つまり親がうまくいっていないと、子どもたちはずっと貧困のままという事態に陥ってしまう。これにはさすがに、ばりばりの自己責任論者も「本人が頑張ればいい」とは言えないのです。この点で社会的合意が取れる。

経済成長の中身を問う 成熟型社会への転換を

先ほどお金がなくても幸せに生きられるとおっしゃいましたが、日本人は相変わらず支出を下げるのではなく、収入を上げることばかりに目が向いているようですが。

もちろん、成長しないよりも成長した方がいいのです。だけど成長することで、より人々を不幸にすることもあり得るのです。そういう意味で「GDPは増えたけれども、これは良くなかったのでは」と人々が距離感も持って考えられる、GDPが増えたことの中身を問える、そういう成熟型の社会に日本の社会もなっていかなければならない。

成長戦略を掲げる自民党の安倍政権に成熟型社会への転換を期待できるのでしょうか。

なぜ成熟型社会が良いかと言いますと、そちらの方が成長型社会よりも強い社会になるからです。

これからも人口は減っていく。若い人たちも減っていく。そのことはみんな分かっていることです。そういう状況の中で、女性とか障害者とかいろんな人たちがみんな社会に参加し、それぞれが力を発揮できるような社会にした方が全体のパイは増えるのです。またそうしなければ、どんどんと社会の総量が落ちていきます。

これからの日本社会に人を切り捨てる余裕などないと思います。世の中には10割のうち3割しかできない人もいれば、Aは得意だけれどBは苦手という人もいます。

人口が増加の一途をたどっていた時には3割しかできない人やBが苦手な人たちを切り捨ててきたのですが、これからは3割しかできない人にはその3割の力を発揮してもらい、Bは苦手でもAが得意な人にはその得意な分野で頑張ってもらうべきなのです。

そういう発想に転換していかなければならない。それが人を生かせる社会であり、そういう世の中にしていくことで強く、豊かな社会が築けるのです。