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時流ワイド

宗教学も社会貢献を意識(5/6ページ)

2013年11月14日付 中外日報

災害支援のよりよい循環めざす

大阪大 稲場 圭信准教授

社会活動を発信

稲場圭信・大阪大准教授は、平成18年に「宗教の社会貢献活動研究」プロジェクト(現「宗教と社会貢献」研究会)を研究仲間と始め、23年から電子ジャーナル『宗教と社会貢献』を無料刊行するなど、宗教者・宗教団体による社会活動を幅広く研究し、情報を発信してきた。

東日本大震災発生直後には「宗教者災害救援ネットワーク」や「宗教者災害救援マップ」をインターネット上に立ち上げ、「宗教者災害支援連絡会」設立にも関わり世話人を務める。宗教者・宗教研究者の連携の動きが広がる中、稲場准教授が支援活動や調査で重視したのは、自覚的な価値判断でよりよき社会状況の実現を目指す共同実践としての「アクション・リサーチ」の方法論である。

稲場准教授は「研究者にも客観的ではなく一歩踏み込んだ関わり方が必要。被災地の現場で宗教者と一緒に活動して学ばせていただき、それを記述して次につなげていく。一方向ではない双方向でのやりとりの過程で見えてきたニーズや課題を他の人たちと共有していくことで、よりよい支援の循環をつくれるのではないか」と話す。

「政治学はよりよい政治のため、教育学はよりよい教育のために、研究者が価値判断をしながら社会に関わっていく。宗教研究においても、宗教の災害支援やさまざまな社会活動に価値を見いだし、コミットメントしつつ研究していく立場があってもいいと思う」

日本における慈善活動は聖徳太子や光明皇后の時代にさかのぼる長い歴史があり、そこには「宗教的利他主義」が存在すると稲場准教授は指摘する。「利他の考え方はさまざまな宗教で説かれている。自分さえよければという利己主義的風潮に対し、人々の苦に寄り添う宗教者の利他的行動や社会貢献は、別の価値観や生き方を示して社会をよき方向に導いていく力がある」

南海トラフ巨大地震に向けてネットワークづくりが課題と語る稲場准教授は、今年4月から全国8万件の避難所と約20万件の宗教施設のデータを登録する「未来共生災害救援マップ」をインターネット上に公開。平常時からのつながりやコミュニティーづくりとともに、災害時における救援活動の情報プラットフォームとしての機能が期待されている。

(高橋由香里)