ニュース画像
倒壊した浄土真宗本願寺派法城寺の鐘突き堂(むかわ町)
主な連載 過去の連載 エンディングへの備え
時代を生きる 宗教を語る
購読のお申し込み
新規購読キャンペーン
紙面保存版
トップ> 時流ワイドリスト> 歩き遍路に込めた思い
時流ワイド

歩き遍路に込めた思い
    直聞インタビュー 菅直人元首相(3/5ページ)

2014年2月8日付 中外日報

思考の幅を広げてくれた 経済成長優先の政治に疑問

歩いている時はどのようなことを考えましたか。

始めた時は年金未納の騒動や党代表の辞任など、自分にとっては区切りだった。自分を見詰め直してみたいという思いはあった。だが実際歩いている時は、複雑なことは考えられない。とにかく難しいことを考えて歩くことは無理だ。ある意味で無心になる。とにかく右足の次に左足と出していかないことには、1ミリたりとも動けない。

もともとお遍路の発生が山岳仏教からという説もあるし、空海も若いころは山を駆け巡って修行したというし、その流れが伝わっているのかもしれない。歩くことで無心になれ、かつ健康的で一石二鳥というものだ。東京に戻ってくると妻から「あんた、いい顔になったね」と言われた。

歩き遍路は川沿い、山道、海沿いをずっと歩いて、3日間同じ風景が続くこともある。大自然を体感する。四万十川や室戸と足摺の二つの岬は特に印象的だった。

足摺には補陀洛信仰がある。ある年齢になると、船をこぎ出して浄土に向かう。あそこは岬が南に下がっていて、海と山の感じから、何となくそういう気分も分かる。

結願した今、どのような心境ですか。

ほっとした。それまでは1年のうちで、どこかで行かなきゃという宿題のような思い、それと同時に楽しみな感じがあった。終わるとそれがなくなってしまって残念な気もする。

金剛杖と菅笠は自宅に持ち帰った。同行二人といって、金剛杖はお大師様の代わり。お大師様と一緒に歩いている象徴でもあり、今でも大事にしている。

もともと岡山にある日蓮宗のお寺が菩提寺だが、四国をずっと巡って真言宗の人とのつながりが増えた。

高野山にも2度行って、毎朝お大師様に奥之院で食事を届ける維那を務めた日野西眞定先生とも親しくなり、大師のお下がりをごちそうになったこともある。八十八カ所ではそれぞれの本堂と大師堂で般若心経を唱えたので、仏教に関心を持って勉強もした。

空海の本を読むようになったが、機会があったら『三教指帰』を読んでみたい。この書は仏教、儒教、道教を代表する人物が出てくる話で、脚本のように三つの宗教について書かれている。空海って人は天才だ。お遍路しなければ、そういった書物があることも知らなかっただろう。

お遍路で政治に影響はありましたか。

何とも言えないが人間の幅が広がったような気がする。どうしても政治は選挙があり考えのスパンが短くなってしまう。もっと本質的な問題を考えるようになった。それは政治にとってもある種の幅を広げ、奥行きを深めることになっているかもしれない。

自分はもともとそういうことには関心があった。本質的なことを考えるのは宗教や哲学。原発についても、だいたい宗教者の多くは止めた方が良いと言っている。政治の世界はどっちかというと目先の経済成長で、それこそ足るを知るではなく、みんな「足らない、足らない」とばかり言っている。

日本人は自然を大切にし、その中で生きているところがあるから、そもそも原発推進には無理がある。広く言えば、お遍路が脱原発を後押ししたということがあるかもしれない。

原発そのものが象徴だが、特に最近の風潮は人間の本当の幸せや喜びを考えるのでなく、経済成長を優先させ、そして経済成長そのものが目的になってしまっているところがある。