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人に尽くす「里の行」始動

京都府綾部市・金峯山修験本宗林南院 田中利典住職

2015年5月13日付 中外日報(キラリ ― 頑張る寺社・宗教者)

千願祈祷の道場前に立つ田中氏。現在、堂内で参籠修行を続けている
千願祈祷の道場前に立つ田中氏。現在、堂内で参籠修行を続けている

2001年から足かけ15年務めた宗務総長職を3月31日付で退任した。これを機に自坊での50日間の参籠修行「化他行・蔵王権現供養法(蔵王供)百座千願祈祷」を発願。5月1日から行に入っている。

「本山での仕事が忙しく、自坊がなおざりになっていた。ここでいったんリセットし、足元を固め直して再出発したい」と田中利典・林南院住職は言う。

1981年に奈良・吉野の総本山金峯山寺に奉職し本山・宗門の要職を歴任。修験道の若きリーダーとして、吉野・大峯の世界遺産登録運動や講演会、著作、インターネットでの情報発信など宗内外で敏腕を振るってきたが、今後は古里・綾部に軸足を置き修験道の興隆に尽くすことになる。

今回の退任は、73年に林南院を開き、2001年に亡くなった先代の父・得詮氏の影響が大きい。得詮氏は五條順教・元管長の懐刀として宗門を支え、宗会議長を15年務めた。利典氏は今年で60歳。還暦と総長在任が父と「同じ15年」の節目を迎え、活動を一度リセットし、父の開いた自坊を立て直すことを決意した。

利典氏は「林南院を大事に」との順教元管長の教えもあり、毎月3日と19日の護摩供や大祭の時は必ず自坊で信者と触れ合った。しかし父が行っていた信者宅で祈祷し、悩み事に耳を傾けたりする活動にはあまり熱心でなかったという。

「子供の頃『拝み屋さんの子』と言われたりして、父と同じことをするのは抵抗があった。父は1年に千人以上の人と会っていたが私は10分の1以下。だが今は、父のように多くの人に関わることが山伏として大事だと思うようになった」

発心した千願祈祷は、30代の終わりに修した4カ月間の「一千座護摩供」以来、自坊での20年ぶりの参籠修行だ。境内の道場で毎日午前中に蔵王供を2座勤め、午後1時から信者の参拝の下、祈願護摩供を修法する。護摩供の後は個別相談の時間も設け連日、信者と膝詰めで言葉を交わす。

「修験道では『山の行より里の行』といわれる。これからは里の行として、吉野で得た力を人のために生かし、人々に安らぎを与えたい」――利典氏の新たな挑戦を地域、全国の“利典ファン”が見つめている。

(飯川道弘)