ニュース画像
札所山主の総出仕のもと、十一面観音の宝前に表白を捧げる田代化主(中央奥)、徳道上人の御影を前にした鷲尾会長(左)
主な連載 過去の連載 エンディングへの備え
苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
購読のお申し込み
新規購読キャンペーン
紙面保存版

がん語って 楽になって

福岡市中央区・高野山真言宗南福寺 渡辺弘敦住職

2015年5月27日付 中外日報(キラリ ― 頑張る寺社・宗教者)

優しい人柄で知られる渡辺住職
優しい人柄で知られる渡辺住職

毎月26日夕、福岡市中央区の高野山真言宗南福寺に老若男女が集う。「がんを語る集い」の日だ。座長は渡辺弘敦住職(55)。現在、がんと闘っている人、家族を看病している人、愛する人を失った遺族、そしてがんに関心のある人たちなどがやって来る。渡辺住職が父をがんで亡くした時に始めて、もう30年近く続いている。

参加者は十数人のときもあれば数人のときもあり、常連の人、初参加の人と様々だ。

同寺は1946年に創建された寺院で、本尊は魔を切り払う剣を持つ倶利伽羅不動明王。そんな荒々しい本尊とは対照的に、優しく穏やかな人柄の渡辺住職は、仏教の教えに照らして何かを指導するのではなく、座長として自然に思いを深く語り合えるように努めながら、寄り添い傾聴する。

「死への不安にさいなまれる患者さん、自責の念に駆られている遺族など、話をしていく間に少しずつ気持ちが軽くなってほしい」と願う。

日頃から常に控えめな渡辺住職だが、不動明王の火炎のように熱い行動力も持っている。

ホスピス運動や自死遺族のグリーフケアに積極的に取り組み、施設に入所している子どもたちが新学期に学校に持っていくための雑巾を集める「ぞうきんの会」も主宰している。

東日本大震災では、高野山足湯隊や心の相談員ネットワークの一員として被災者を支援。福岡での写真洗浄ボランティアにも携わり、洗浄しても駄目な写真の焚き上げ供養も引き受けるなど、地元での活動も大切にした。

被災地に行けない人の気持ちになって「地元でもできることはたくさんあります」と周囲に呼び掛けた。

2011年の夏休みからは毎年、被災地の子どもたちを九州に招いて、「レインボーキャンプふくおか」を続け、宗派を超えて企業・団体・個人など様々な縁が活動の支えだ。

“本業”の僧侶としても御詠歌や九州修験の会などで活躍する渡辺住職。「成功ばかりではなく、失敗もたくさんありました。でも、私にできることがあれば何でも取り組ませてもらうつもりです」

(河合清治)