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人が集う寺 信頼得て前進

千葉県木更津市・真言宗豊山派新御堂寺 藤平貞順住職

2015年6月10日付 中外日報(キラリ ― 頑張る寺社・宗教者)

夫の樹紀(たつおき)副住職と共に御詠歌を指導する藤平住職(手前)
夫の樹紀(たつおき)副住職と共に御詠歌を指導する藤平住職(手前)

真言宗豊山派新御堂寺(千葉県木更津市)の藤平貞順住職(35)は10年前、住職に就任してから御詠歌や写経、ラジオ体操、盆踊りなどを始め、地域社会の中でお寺の可能性を広げている。

藤平住職は新御堂寺に隣接する魚屋で生まれた。祖父が先代の栗原貞芳住職と仲が良く、幼い頃から寺は遊び場だった。福祉に関心を持ち、高野山大で社会福祉学を専攻。2年生の時に僧籍を取得すると翌年、後継ぎがいなかった先代から住職にならないかと誘われた。家族が心配する中、「やってみなくては分からない」と引き受けた。

入寺してからは「僧侶は葬儀だけでなく、話を聞いたり、人を癒やしたりするのも大切な役目」と大学で学んだことを肝に銘じ、人が集まる寺にするために次々と新しい取り組みを始めた。先代は2007年に亡くなるまで何も言わなかったが、「今思えば、何十年も先代住職が守ってきたものを否定してしまった」との反省もある。

檀家の中にも、新しい取り組みに抵抗を感じる人がいた。納骨堂の建立の時には「寺は金もうけなんてしなくていい」と批判を受けた。「批判を受けても正しいと思うことは貫きたい」と建立の意義などを説明し、話し合いを重ねた。

納骨堂ができると、反対していた人からも納骨の申し込みを受けるようになった。「在家出身の若い女性の住職だから、これまでとは違うことを始めると不信感があったと思う」。しかし、10年間で檀家の数も増え、「お寺に来やすくなった」と地域の人々から少しずつ信頼されるようになった。

現在は、年内までの完成を目指して客殿を建立中。「新しい葬儀の在り方を模索したい。母親を対象にしたサロンを開きたい」とアイデアは尽きない。「自分の意思ではなく、本尊の大日如来様に動かされ、助けられている」と話す。

住職として寺の護持に責任を持つようになってから、「このままではいけない」という危機感に突き動かされてきた。「商人の家で育ったので、お付き合いを大切にするという感覚が身に付いているのかも。在家出身としての感性をよい形で生かしていきたい」と語る。

(甲田貴之)