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がん患者や家族と共に

京都市上京区・臨済宗妙心寺派法輪寺 佐野泰典住職

2015年6月24日付 中外日報(キラリ ― 頑張る寺社・宗教者)

病院で、癒やしの効果があるハンドマッサージをしながら、患者の話を傾聴する佐野住職
病院で、癒やしの効果があるハンドマッサージをしながら、患者の話を傾聴する佐野住職

臨済宗妙心寺派法輪寺(京都市上京区)が、がん患者や家族、遺族の話を聞く会「緑蔭」を始めて3年になる。佐野泰典住職(52)は「月に5、6日はそのような活動に関わっています」と話す。顔なじみになった看護師から「こういう患者さんがいるので会ってほしい」と言われ、患者の自宅に出向くこともある。

時折、気が向いたら寺にやって来る60歳代の独身男性がいる。肺がんになって、一時は職場復帰したが骨に転移し、今は末期状態という。男性は一緒にお茶を飲みながら、ひとときを過ごす。

「その人は『受け入れてくれるのが一番うれしい』と言います。がんばれとか、大変だなと言われるよりも、受け入れてくれる存在があるのがうれしいと。それが活動の基本だと思うし、お寺の存在意義だと思う」

佐野住職は現在、「臨床僧の会・サーラ」の代表も務めている。法輪寺は、京都の「だるま寺」として知られ、節分をはじめ多くの参詣者でにぎわうが、「緑蔭」の活動のためにも寺を積極的に開放している。

「緑蔭」は基本的に毎月第1土曜日に開き、来場者には時間の制限を設けず、心の内を語って気が楽になってもらうのを目的としている。土曜日以外でも門戸を開き、法輪寺ががん患者の会や、家族・遺族のサロンの会場になることもある。

臨床僧の会の発会時に、ある医師から「信者獲得のためにやるのか」と言われたことがあった。「私もそうであってはならないと思います。寺の坐禅会など、ご本人が来たいと言えば別ですが、こちらから誘うことはしません」と佐野住職は言う。

これからの時代は、緩和ケアや看取りがより強く求められる。患者ばかりでなく、同時にその家族や看護師など、周囲の人々へのケアも必要になってくる。

「我々が特別に、何かができるわけではありません。ただ患者がいる家族はデリケートでもあり、私たちが関わることで人間関係が円滑になることがあります。緩衝材というか、クッションの役割を果たしているように思っています」

(萩原典吉)