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市民の笑い声響く落語会

広島市西区・浄土宗西山深草派誓願寺 広瀬隆慶住職

2015年10月14日付 中外日報(キラリ ― 頑張る寺社・宗教者)

今年4月26日に開かれた策伝会。参詣者は柳家福治さんの落語に聞き入った
今年4月26日に開かれた策伝会。参詣者は柳家福治さんの落語に聞き入った

参詣者でいっぱいの本堂に、どっと笑い声が起きた。訪れた人々は、プロの落語家の一席をたっぷりと楽しんだ。

広島市西区の浄土宗西山深草派誓願寺で毎年4月第4日曜日に開かれる「策伝会」では、落語だけでなく書院で茶会も催され、市民ら約200人で境内がにぎわう。

「参列者を楽しませたい」と願っていた広瀬隆慶住職(67)は、1991年の誓願寺創建400年の法要で、同寺を開いた安楽庵策伝上人にちなんで、本堂で落語を上演することを思い付いた。

上人は笑いをちりばめた説法を得意とし、著作の法話集『醒睡笑』が、後に落語のネタ本になったこともあって、「落語の祖」ともいわれている。

初回の演者は、三遊亭圓窓さん。熟練の話しぶりで参列者を沸かせ、本堂は寄席に様変わりした。広瀬住職は「初めてプロの落語を聞いたという人もいて、喜んでくれた。本堂に笑い声が響く様子を見て、年に1度ずつでも続けていこうと思った」と振り返る。

「檀家さんだけでなく、市民にお寺を開くことが大切だ」と話す。誓願寺はかつて約1万600平方メートルの敷地に壮大な大門や堂宇が並び、曹洞宗國泰寺、浄土真宗本願寺派広島別院と共に、広島の三大伽藍に数えられていた。だが45年8月6日、原子爆弾の投下で寺は一変する。建物は灰になり、当時の住職も亡くなった。

戦後、誓願寺跡地は復興計画で平和記念公園になり、現在地に移転。広瀬住職の師父・凖隆前住職が伽藍の再建を果たしたのは、63年のことだった。

策伝会は地域住民にとって、地元に引っ越してきた寺に、気軽に足を運ぶ機会にもなった。

広瀬住職は茶道に通じ、和歌に秀でた文化人としての策伝上人の側面にも光を当ててきた。上人好みの茶釜「安楽庵釜」の復元も手掛けた。

策伝会の法要で身に着ける七条袈裟は、上人が愛した織物「安楽庵裂」で仕立てたものだ。「落語や茶を楽しみながら、気持ちを穏やかにしてもらいたい。そして皆さんに策伝上人について、もっと知っていただければ」と話す。

(丹治隆宏)