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小田川の氾濫で本堂などが3メートル以上浸水した曹洞宗源福寺(岡山県倉敷市真備町)。岡山県曹洞宗青年会の会員らが仏具や家具を搬出していた(11日)
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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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肚を据えて人の言葉聞く

熊本市南区・真宗大谷派浄玄寺 吉尾天声住職

2016年6月8日付 中外日報(キラリ ― 頑張る寺社・宗教者)

被災者がコーヒーを飲みながら、日々の不安などを宗教者に話す
被災者がコーヒーを飲みながら、日々の不安などを宗教者に話す

4月に発生した熊本地震は、建物だけでなく人心にも大きな爪痕を残している。被災地で活動する九州臨床宗教師会会長の吉尾天声住職(50)は、傾聴喫茶「カフェ・デ・モンク」などの活動を通して、被災者に寄り添うとともに、自らの信仰とも真摯に向き合っている。

益城町の産業展示場「グランメッセ熊本」の広い駐車場には、いまだテントや車中泊で避難している人が少なくない。同会では、4月28日の第1回以来十数回にわたり、駐車場の一角の大きな木の陰にテントを張り、「カフェ・デ・モンク」を開いている。

最初の頃は久しぶりのコーヒーの香りにつられて200人以上が列を成した。飲み物だけを持って帰るだけの人も多かったが、回を重ねるうちに張っていた気が緩んで座り込み2~3時間も話し込んでいく人や、開催を心待ちにする常連の人も増えてきた。

ほぼ毎回参加している吉尾住職は「最初はとにかく無事に過ごすので精いっぱいだった人たちも、家庭や避難所での日々の不満、子どもの健康やこれからの復興に対する不安を、時には涙ながらに話してくれるようになっている」という。

「首が折れた阿弥陀様を背負っておろおろ歩け、大地の裂け目に讃美歌を響かせよ」

東日本大震災の被災地で活動する本家「カフェ・デ・モンク」マスターである金田諦應・曹洞宗通大寺住職から掛けられた言葉だ。吉尾住職は「金田住職は、東日本大震災で信仰も何もかもが吹っ飛び、そこから苦悩しながら再び立ち上がったと言っていた。目の前の人の言葉を肚を据えて聞くことの大事さ、そこから自分に響くものは何なのかが問われているのではないか」と受け取った。

精神保健福祉士の資格を持ち、引きこもりの人の自立支援などにも関わってきた。宗教・宗派を超えた臨床宗教師として活動するうちに、「かえって自分が“生かされている”ということや、人と人とのつながり、自身の限界というものがあらわになり、信仰が研ぎ澄まされ深まっていると感じる」と語る。今後は避難所に宗教者が常駐する「カフェ・デ・モンク」設置も企画・調整中だ。

(佐藤慎太郎)