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遊びながら仏法染みれば

奈良県香芝市・浄土宗寳樹寺 中村勝胤住職

2016年6月15日付 中外日報(キラリ ― 頑張る寺社・宗教者)

子どもたちの中に溶け込む中村住職
子どもたちの中に溶け込む中村住職

毎週水曜日の午後、本堂は真っ黒に日焼けした男の子や、仲間とふざけ合う女の子でいっぱいになる。奈良県香芝市五位堂地区の浄土宗寳樹寺で、週1回開かれる「五位堂子ども文庫」。毎週40~50人ほど、多いときで70人の小学生が集う。時間は午後3時から5時半までで、出入りは自由だ。好きな時にやって来て、今帰ったかと思えば、仲間を連れて引き返してくる。

始まったのは、30年ほど前。地域で図書貸し出し活動をしていた住民が引っ越すことになり、蔵書を託されたのがきっかけだった。中村勝胤住職(51)は「水曜日にここに来れば必ず友達がいるし、安心して過ごせる場所になっている」と話す。

「文庫」とはいうものの、本を手にする子どもは今はほとんどいない。男の子たちは数人ずつ車座になってカード交換ゲームや携帯型ゲーム機に夢中になり、女の子たちは宿題を広げつつ、おしゃべりを楽しむ。中村住職は「本を読む人の邪魔になると、5年ほど前にゲーム機を禁止したことがある。だが寒くても暑くても、ずっと本堂の縁側で遊んでいる。とうとう根負けして許してしまった」と笑う。

「つるポン」。子どもたちは中村住職をそう呼ぶ。以前は「お兄ちゃん」と呼ばれていたが、いつの頃からか、あだ名「つるポン」が定着した。「子ども文庫」の時間、中村住職は子どもたちの中に溶け込む。「坊主めくり」で女の子と遊ぶ中村住職の背後では、背中がくっつくくらいの近さで男の子たちが携帯型ゲーム機で遊んでいる。

今年、70年近く続く寳樹寺の教化活動「五位堂安養日曜学校」が正力松太郎賞本賞に輝いた。現在は月に1回ほど、土曜日に開校し、お勤めやゲームなどをする。花まつりや成道会などに合わせた催しをすることもある。一方、「子ども文庫」では宗教的なことは何もしていない。だが本尊の阿弥陀如来は、本堂で遊ぶ子どもたちを背中から包み込むように、絶えずまなざしを送っている。中村住職は「仏法は毛穴から入るとよくいう。何も宗教的なことをしなくても、寺への親しみが生まれ、意識せずに身に染みてくるものがあるはず」と語る。

(丹治隆宏)