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死産経験者の心をケア

千葉県船橋市・日蓮宗上行寺別院 遠山玄秀副住職

2016年7月20日付 中外日報(キラリ ― 頑張る寺社・宗教者)

ポコズママの会の冊子を手に死産経験者の苦悩を語る遠山副住職
ポコズママの会の冊子を手に死産経験者の苦悩を語る遠山副住職

東京のベッドタウン、千葉県船橋市。JR船橋駅から徒歩約20分の住宅地に上行寺別院はある。これまでお寺と縁の薄かった人たちに、いのちの大切さを考えるきっかけをつくろうと、遠山玄秀副住職(38)は死産経験者の会を開くなど新たな縁づくりに取り組んでいる。

流産・死産を経験した人たちが語り合う「ポコズカフェ」。船橋駅前のレンタルスペースで、2カ月に1回開いている。上行寺の主催だが、参加しやすいよう寺院の外に会場を設けた。「生きて生まれてこなかった子は、今どうしているんだろう」「このあいだ飛んできたトンボはきっとあの子」――。毎回5人ほどが参加し、ため込んできた思いを打ち明ける。多くの人の胸の底に横たわるのは、親として何かできることがあったのではないかという後悔だ。

「死産で供養をしてほしいとお寺を訪れる人には、強い思いがある」と遠山副住職。生まれる前に亡くなった人の供養は、しなくてもあまり世間で問題とされない。それでもぜひにと山門をくぐる人が後を絶たないのは、それだけ心の傷が大きいからだと感じてきた。

流産・死産経験者でつくる「ポコズママの会」と縁ができ、悲嘆を抱える家族向け冊子の作成に協力。ちょうど刷り上がる頃、遠山副住職自身が死産を経験した。「当然生まれてくるものと思っていた」。当事者となったことも、カフェの実施を後押しした。

カフェでは、聞かれない限り仏教の話はしない。遠山副住職は僧侶というより、子を亡くした夫の立場で同席する。出席者の多くは女性。「こんなとき、夫はどう思うのでしょうといったことをよく聞かれる。夫婦だからこそお互い聞きにくいこともある」

この他にも、臨床宗教師として難病の患者を定期的に見舞ったり、医師や介護士など様々な職種の人と死や生について考える「チームビハーラ」など、様々な活動を行っている。

共通するのは、いのちの尊さに気付いてほしいとの願いだ。「自分の死生観を振り返ることで、自分だけでなく他人のいのちも大切にできる」。言葉でいのちの重みを説教するのではなく、自然と自分で考えられるようにとの思いが行動の原動力となっている。

(有吉英治)