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自死防ぐ「孤立させない」

秋田県藤里町・曹洞宗月宗寺 袴田俊英住職

2016年8月24日付 中外日報(キラリ ― 頑張る寺社・宗教者)

喫茶サロン「よってたもれ」で、エプロン姿でコーヒーを提供する袴田俊英住職
喫茶サロン「よってたもれ」で、エプロン姿でコーヒーを提供する袴田俊英住職

「長らく自死について語ることはタブーとされてきた」と話す袴田俊英住職(57)は、全国で最も自殺率が高い秋田県内で、真正面から自死の問題に取り組み、2000年に「心といのちを考える会」を立ち上げた。地元の藤里町で民間と行政が手を取り合って行う事業は、同県のモデル事業とされ、自死者の減少に貢献してきた。

人口約3600人の同町で4人が自死すると、全ての町民が自死者と何らかの関わりを持つ計算になるという。その悲しみ、衝撃は計り知れず、住民は自死と正面から向き合おうとはしてこなかった。

袴田住職が命の問題について取り組みだしたのは、1980年代初め頃。左目の失明をきっかけとして、臓器移植の問題やターミナルケアなどを学び、自主勉強会を立ち上げた。自死についての講演会が93年にあり、この問題の深刻さを認識。3年後には同町と地元の仏教青年会に呼び掛けて、自死を防止する活動を始めた。

今年で14年目になった喫茶サロン「よってたもれ」。毎週火曜日、町の施設で開くコーヒーサロンで、集まった地域住民が世間話を楽しむ。

「自死の根底にあるのは孤立だ」と考える袴田住職は、喫茶サロンの他にも人々が集える場を提供する。2007年、男性5人が相次いで自死したことを受けて、男性の孤立を防ごうと始めたのが「赤ちょうちん『よってたもれ』」。公民館などで、世代を超えた参加者が酒を酌み交わす。それぞれの半生や思いを本音で語り合い、互いの存在を認め合う貴重な時間になっている。

現代社会は、仏教などに培われてきた日本の精神文化が失われ、経済を最優先するようになった。「人々はいかに自分が快適な生活を送るかを大事にする。苦しむ人は行政や医者等の専門家に任せればいいと考える。こうした無関心から孤立が生まれる。これを防ぐには、お金中心でないものに価値があることを見いださなければならない」と袴田住職。

それは仏教で言う「同事」や「大悲」などの精神だ。「その人のために何ができるかと考え、自分の時間や労力を少しでも出す。地域でどのように支えていくかが問われている」

(赤坂史人)