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「いのち」伝える保育 ひと言ひと言丁寧に

神戸市中央区・浄土宗阿弥陀寺 黒川恭眞住職

2017年4月5日付 中外日報(キラリ ― 頑張る寺社・宗教者)

つきかげ認定こども園で、園児と触れ合う黒川住職。「子どもから教わる。一緒にいて楽しくないということはない」と話す
つきかげ認定こども園で、園児と触れ合う黒川住職。「子どもから教わる。一緒にいて楽しくないということはない」と話す

浄土宗阿弥陀寺(神戸市中央区)で発祥した社会福祉法人「みのり福祉会」。現在は、市内3カ所で幼保連携型認定こども園を開く。0歳から6歳までの乳幼児、3園合わせて約350人が通う。黒川恭眞住職(77)=同市北区・つきかげ認定こども園園長=は「仏教保育の根本であるいのちを大切にする心を育みたい」と話す。

食事も一つの入り口になる。園では毛を抜いただけの丸ごとのニワトリや大きな肉の塊などを調理して見せることがある。子どもたちの前に生きたタコがにょろりと置かれた時には「わーっ、怖い」と悲鳴が上がった。はらわたを取り、切り分けるうちに、じっと真剣に見つめる園児もいる。たこ焼きにして食べる前には、「命を頂くから『いただきます』と言うんだよ」と語り掛ける。

つきかげ認定こども園には畑があり、ダイコンやイモを育てている。農薬を使用しないため、虫もたくさん出る。「このアオムシがチョウチョになるんだよ。でも、そのままにしたらキャベツが食べられてしまうんだよ。だから、かわいそうでも殺してしまわないと」と正直に告げる。経験と投げ掛けられた言葉が子どもたちの中に積み重なって、いのちを尊ぶ気持ちが培われる。

黒川住職は、言葉の大切さを強調する。「職員には、カリキュラムを作っても心が入っていなくては駄目と話している。ひと言ひと言、言葉を掛けていくことが大事」と語る。

みのり福祉会の始まりは、1956年。阿弥陀寺に隣接して職業安定所があり、日雇い労働者はその日の職を見つけると、子どもを境内に置いて夕方まで帰ってこなかった。見かねた先代住職の泰秀氏がご飯やおやつを出すようになった。翌年には国の失業対策事業として、「託児所みのり園」が設立され、後に「みのり保育園」(現みのり認定こども園)へと発展。女性の社会進出が進む中、81年には求めに応じて新たに明照保育園(現明照認定こども園)を設立した。

黒川住職は、これまでの歩みについて「そこに山があるから登るんだという話があるが、そこに子どもがいるならば、放っておくわけにはいかなかった」と穏やかに振り返る。

(丹治隆宏)