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掲示伝道を始め40年 苦情歓迎自らの学びに

静岡県磐田市 臨済宗妙心寺派見性寺 松山正宗住職

2017年8月30日付 中外日報(キラリ ― 頑張る寺社・宗教者)

黒い板に白いペンキで力強く書かれたメッセージと松山住職
黒い板に白いペンキで力強く書かれたメッセージと松山住職

掲示伝道を行う寺院は少なくないが、静岡県磐田市の臨済宗妙心寺派見性寺の掲示板には、松山正宗住職(72)の個性的で力強いメッセージが月替わりで掲げられ、地域住民に親しまれている。

7月のメッセージは「共謀罪法という 虎に 平穏を 喰われるなよ」。「共謀罪法」を虎と表現し、「平和」や「自由」より広い意味を込めて「平穏」を選んだという。「偉人の格言を引用するのではなく、自分の言葉だからこそ訴える力がある」と松山住職は話す。

掲示伝道を始めたのは40年前。最初の10年はほとんど反響がなかったが、近隣の高校生の間で話題に上るようになった。現在では、掲示板を見るためにわざわざ寺を訪れる人もいる。

決して好意的な反応ばかりではない。中には掲示板の言葉に苦情が寄せられることも。つい先日も「政治色のあるメッセージは控えるべきではないか」と女性が電話をかけてきた。松山住職はそのような人たちをお客さまと呼び、「掲示板を真剣に読んで、自分の中で理解しようとして、消化しきれなかった人たちだから」と、時には何時間も電話で、または直接膝を突き合わせて話を聞く。

自分の考えを出し尽くしたお客さまが「私はこう思いますが、住職のお考えは?」と尋ねてくる。そこで僧侶としての考えを説く。掲示伝道がきっかけとなり、悩み相談に訪れる人も増えた。

始めた当初は人生訓が多かったが、近年は政治的なテーマを扱うことが多くなった。8月は「奴隷解放 植民地放棄 話し合って 戦争も 放棄しよ」。歴史の進歩で奴隷も植民地も放棄することができた。次は戦争だということと、そのためには武力ではなく、話し合いこそが重要となるとの思いを込めた。

「×も 45度 廻せば +に なる」。これもメッセージの一つ。苦情も視点を変えればお客さまという考えだ。

松山住職は「私の言葉が正しいというわけではない。人にも読んで考えてほしい。問題提起だ」と語る。政治を扱う際に気を付けているのは特定の思想に偏らない平衡感覚。そのため、先月のメッセージで批判的だった人が今月は賛成してくれることもまれではない。

「自分と違う考えの話を聞くことで、私自身も学んでいる。苦情があることが本当にうれしい」と笑顔を見せる。

(甲田貴之)