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寺を「終活」の窓口に 相談増加、広がる輪

京都市南区真言宗泉涌寺派城興寺 上原慎勢住職

2017年9月20日付 中外日報(キラリ ― 頑張る寺社・宗教者)

「人々の悩みに耳を傾け、少しでも手助けできれば」と話す上原住職
「人々の悩みに耳を傾け、少しでも手助けできれば」と話す上原住職

寺を終活の窓口に――。上原慎勢住職(57)の元には葬式や墓、遺産相続など死後に関する相談が月20件ほど舞い込む。そのうち3分の2は檀信徒以外の人からの相談だ。

2013年に真言宗善通寺派大本山隨心院(京都市山科区)と同派福勝寺(上京区)、太子堂白毫寺(下京区)と共に「終活駆け込み寺」を結成した。遺産相続や遺書など法律問題は専門的知識が必要なため、弁護士や司法書士に協力を依頼。僧侶だけでは対応できない問題にも対処できる仕組みを整えた。参加寺院は年々増え、現在は9カ寺が参画する。

上原住職がこのプロジェクトを始めるきっかけは約10年前の出来事。

ある男性が妻の遺骨を永代供養の夫婦墓に埋葬してほしいと頼みに訪れ、本人も死後同じ墓への埋葬を希望し、その供養代も置いて帰った。ところがその2年後、男性の知人とおぼしき人から突然電話で男性の死を告げられ、夫婦墓への納骨を拒否された。男性の希望をかなえてあげたくてもそれを証明する手段がなく、男性の遺骨がどう処理されたかを知るすべもなかった。

「これではいけない」と思い、生前に納骨や葬式についての悩みを聞く「終活相談」の必要性を痛感。知り合いの住職にも声を掛け、賛同を得てプロジェクトが発足した。

会では活動内容の周知のために毎年終活セミナーを開催。医師で医療評論家の中村仁一氏や、映画監督の故大島渚氏を介護した妻の小山明子氏らが講演し、毎回100人を超える人が詰め掛けた。この活動が全国紙でも取り上げられ、檀信徒以外の人からの相談が急増した。

相談は「墓地を移転したいが、どうしたらいいか」「永代供養をお願いしたい」「葬式で僧侶に支払うお布施はいくらにしたらいいか」などの内容が多い。上原住職は「こうした事柄は自分の檀那寺には聞きにくいので、こちらに多く寄せられるのではないか」と分析する。

中には「消息不明になった息子を捜し出して、最期を看取ってもらえるようにしてほしい」という相談を受け、連携する司法書士に依頼し当人を見つけ出したことも。「それまで寺に行きにくいと感じていた人も、この取り組みにより気軽に相談しやすいと思ってもらえるようになった」と手応えを感じている。

昨年には種智院大(京都市伏見区)で臨床宗教師の資格を取得した。「終活相談というと何か新しい取り組みのようだが、やっていることは寺の本来の役割と変わらない。人々の悩みに耳を傾け、少しでも手助けできれば」と話す。

11月12日には5回目となる終活セミナーを種智院大で開く。自宅で最期を迎えることをテーマに、夫を看取ったドキュメンタリー映画を制作したフリーアナウンサー・長谷川ひろ子氏が講演する。問い合わせは同寺=電話075(691)3614。

(岩本浩太郎)