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若手芸人らに発表の場 かつては自らも苦労

東京都港区・日蓮宗妙善寺 的場徳雅住職

2017年10月4日付 中外日報(キラリ ― 頑張る寺社・宗教者)

映画祭の開催も実現。来場者に趣旨を説明する的場住職(昨年11月)
映画祭の開催も実現。来場者に趣旨を説明する的場住職(昨年11月)

IT企業が多数入居する東京・六本木ヒルズと、道を一本隔てて妙善寺は立つ。境内に入ると本堂脇に造られた滝の音が耳に涼しく、都会の喧騒を忘れさせる。

大都会の一画という地の利を生かして、お笑いや音楽のライブ、写真展、美術展が行われる。駆け出しの演者・芸術家の貴重な発表の場として地域に開かれている。

子どもの頃からお笑い好きだった的場徳雅住職(36)は立正大を卒業後、芸能プロダクションの養成所に入学。芸人を目指し稽古や舞台に励んでいたが、慶雅・前住職が大病を患い、自坊に戻ることになった。

そんな折、知り合いの写真家から写真展の会場にお寺を使わせてもらえないかと相談を受けた。脳裏に浮かんだのは芸人の時の記憶。ライブの会場費を稼ぐためバイトにあくせくした日々だ。「芸を披露するためにバイトして、稽古の時間がなくなる。本末転倒で、才能ある人が埋もれかねない」。的場住職は快諾した。

この写真展は成功裏に終わり、知人から知人へと話が伝わっていった。妙善寺を使えるのは、まだプロとして活躍していない人たち。葬儀や法事が入れば予定はキャンセルされるが、それでも貸してほしいという人が後を絶たない。

イベント開催をきっかけに寺の団参に参加する人や、読経を頼んでくる人もいる。「若い芸術家の助けになればと始めたが、結果として仏教との縁づくりにもなっている。教えを広めようと力まずに、気楽に好きなことをした方がお寺が身近になるのでは」

一番うれしいのは「違う分野の人がつながること」だという。互いの活動が刺激し合い、新たな創造につながっていく。その集大成ともいえるのが、昨年11月に催した映画祭。公募した短編映画を上映し、お笑い、音楽演奏も行った。

映画も好きで以前から温めていた企画だが一人では到底できなかった。イベントで出会った専門家たちに依頼し実行委員会を組織。組み合わさった力は広く伝わり、20作品以上が集まり大いに盛り上がった。今年も11月18、19日に第2回を開く。現在、作品を募集中だ。

江戸時代の妙善寺は、囲碁や歌の会が頻繁に開かれ人々が集まる寺だった。様々な人が交流し、新たな芸術が立ち上がっていく寺として今も地域に貢献している。

(有吉英治)