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境内に水田広がる笑顔 地域に安らぎ自らの喜び

神戸市長田区 臨済宗南禅寺派長福寺 原田太胤住職

2018年2月21日付 中外日報(キラリ ― 頑張る寺社・宗教者)

田植えの作業を見学する児童らと原田住職(中央)。長田区に50年ぶりに水田が復活した
田植えの作業を見学する児童らと原田住職(中央)。長田区に50年ぶりに水田が復活した

神戸市長田区の臨済宗南禅寺派長福寺の原田太胤住職(57)は、境内の一画に約50坪の水田を造り、昨年から米作りに挑戦している。老朽化した建物を取り壊し、跡地を利用して作務に励もうと始めたものだったが、その風景は都会に住む人々の心を癒やし、体験学習に訪れた小学生からも笑顔があふれる。街の中にできた小さな水田が、地域に安らぎと喜びの輪を広げている。

原田住職が水田を造ろうと考えたのは、境内西側の築60年近い長屋を取り壊した2016年夏。当初は畑にするつもりだったが、雨の日の水はけの悪さを見て、逆に「粘土質で水持ちが良く稲作に向いているのでは」とひらめいた。「淡路島の米農家に生まれ、小さい頃から稲作を手伝っていた経験と思い出を作務に生かしてみたい」という思いもあった。

水の確保が心配されたが、かつて長屋には豆腐店があり、店が家主に内緒で掘っていた井戸から水が引けることが分かった。しかし約100坪の跡地全部の水を賄うのは難しく、半分を水田にして残りを畑にすることにした。

水田造りに動き始めると、不思議と様々な縁が広がった。「米作りへの理解を深めてほしい」とJA兵庫六甲の須磨支店から協力の申し出。土壌改良や施肥の指導も受け、うるち米の「きぬむすめ」と、もち米の「はりまもち」の2品種の苗を提供してもらった。ただ農薬の使用は断り、カエルやイモリ、ヤゴなどの力を借りて完全無農薬で挑んだ。

近隣の神戸市立宮川小から「農業体験の授業の一環として田植えを見学させてほしい」との要望が寄せられた。6月の田植えは児童約50人が見守る中、原田住職が実家から持ってきた「田植え定規」などの道具を使って行った。10月の稲刈りには児童約30人が参加。原田住職と一緒に鎌を手に稲を刈り、束ねて稲架に干した。

初穂は近くの長田神社に献納し、収穫した米は成道会に仏飯として供えた他、協力者へのお礼に少しずつ配り、もち米は正月の鏡餅にした。

「神戸には『田』の付く区は長田区だけ。かつては町を南北に流れる苅藻川沿いに長く田んぼが広がっていましたが、都市開発で今はもうありません。最後まで残っていた田んぼも50年前の大水害でなくなりました。自分の喜びを求めて造った田んぼでしたが、今では地域の人々が喜ぶ姿が自分の喜びに変わりました」

(河合清治)