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サイパンへ青少年活動40年 平和訴え、自らの使命

大津市・天台宗三宝莚 栢木寛照住職

2018年4月11日付 中外日報(キラリ ― 頑張る寺社・宗教者)

バンザイクリフで慰霊法要を営む栢木住職
バンザイクリフで慰霊法要を営む栢木住職

太平洋戦争の激戦地だった西太平洋・サイパン島に子どもたちを連れて行き、戦没者の慰霊と現地の人々との文化交流を始めて今年で40年になる。これまでに引率した子どもは延べ1500人を超えた。

旅費はほぼ全て栢木寛照・天台宗三宝莚住職(72)が負担する。1回の渡航で1千万円に上ることもあるが、「保護者の負担にすると子どもたちが観光気分になってしまい、感謝、尊敬の気持ちが生まれない」としてテレビ出演や講演などで得た収入から賄ってきた。

宗祖伝教大師が「御遺誡」で弟子に諭した一節「童子を打たずんば、我が為に大恩なり」に心打たれたのがきっかけ。人材育成に心血を注いだ伝教大師がいかに子どもたちに愛情を持って接していたかを感じ、自らも青少年育成を通じて、宗祖の教えを広めたいと思うようになった。

20代後半の時、偶然サイパンを訪れた。そこで旧日本軍の戦闘機や戦車の残骸が戦後30年を経てもなお、至る所に放置された光景を目の当たりにし、土を少し掘れば人骨まで出てくる状況に衝撃を受けた。「今の平和で豊かな日本は戦争で犠牲になった多くの人のおかげ。子どもにも戦没者への感謝の念を持ってもらおう」と思い立ち、1978年に20人の子どもをサイパンに連れて行った。以降、毎年夏に小学高学年から中高生までの40人前後と共に、戦争の傷痕が残る島内各所を回り、多くの日本人が投身自殺したバンザイクリフなどで慰霊法要を営んだ。

慰霊の旅を、子どもたちが世界に目を向けるきっかけにしてほしいとの思いもあり、約1週間の滞在中は現地の家庭にホームステイする日程を組み込んだ。83年からはサイパンの子どもを日本に招待し、慰霊の旅に参加した子どもの家庭でホームステイさせる交流も始めた。サイパンから帰国すると毎回、保護者から「兄弟の面倒を見てくれるようになった」「不登校の息子が学校に通いだした」「英語の勉強に打ち込むようになった」といった我が子の成長を喜ぶ報告を受ける。

ただ、最近は海外旅行が珍しくなくなり、ピーク時には2千通だった応募数が300通にまで減った。社会全体で反戦意識の希薄化も進む。それでも「平和を訴え続けるのが宗教者の使命。続けなあかんのです」と自らに言い聞かせる。

(岩本浩太郎)