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「らくがき」用に白壁開放 願い事を書きに来て

京都府八幡市 臨済宗妙心寺派単伝寺 堀尾行覚住職

2018年5月23日付 中外日報(キラリ ― 頑張る寺社・宗教者)

取材に訪れたのは4月下旬。すでに白壁の8割が「らくがき」で埋まっていた
取材に訪れたのは4月下旬。すでに白壁の8割が「らくがき」で埋まっていた

「常に笑顔で過ごせますように」「好きな人と付き合えますように」――。「らくがき寺」として知られる臨済宗妙心寺派単伝寺(京都府八幡市)の大黒堂には、白壁一面に願い事がびっしりと書き込まれている。見ていると、つい顔がほころんでくるが、日常のささやかな幸せが案外切実な願いでもあることに気付かされる。

堀尾行覚住職(69)は「昔は子どもたちが本当に落書きしていることが多かった。最近は大人が真面目な願い事を書くことが増えました」と話す。

大黒堂は1957年に建立。同寺は檀家がなく、5年ほど無住になっていた。55、56年頃に堀尾住職の父で先住職の成仙氏が入寺し、荒れかけていた同寺の再建に乗り出した。当時、成仙氏は中学校教諭を兼職し、土・日曜日に京都や大阪で托鉢して浄財を集め、旧本堂に祀られていた大黒天像を安置する大黒堂を建てた。

その時、せっかく浄財でできた御堂なので、大黒さんに見えるように願い事を直接書いてくださいと呼び掛けたのが「らくがき」の始まり。堀尾住職は「だから私は先代の父がやってきたことを受け継いでいるだけ」とほほ笑む。

「らくがき」でいっぱいになった白壁は毎年12月20日頃に塗り替える。しばらく乾かして元日の午前0時、年明けと同時に参拝者を迎え入れる。「らくがき」が多いのは年始で、受験シーズンにも増えるという。白壁は徐々に分厚くなり、剥落の危険もあって3、4年ごとに下地から取り換えている。

大黒堂が開放されるのは土・日曜日だが、平日も連絡があれば受け付ける。リピーターも多く、「らくがき」が縁で同寺の信者になった人もいる。昔からテレビの情報番組などにもよく取り上げられ、昨年は初のドラマロケが行われた。

最近はSNSの普及もあり参拝者は増えたが、同寺は観光寺院ではないため、人が押し寄せることはない。府道に隣接しながら、境内に一歩入ると、手入れが行き届いた静謐なたたずまいに心が落ち着かされる寺院だ。

堀尾住職は「お寺はやはり皆さんに来ていただかないと。その意味で、この大黒堂に来ていただくのはありがたいことです」と話している。

(萩原典吉)