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「責めず許さず」が基本 千葉刑務所で教誨師20年

千葉県御宿町・天台宗妙音寺 浅野玄航住職

2018年7月25日付 中外日報(キラリ ― 頑張る寺社・宗教者・宗教施設)

集合教誨で命の尊さを諭す浅野住職
集合教誨で命の尊さを諭す浅野住職

主に殺人や放火などの重罪犯が服役する千葉刑務所で、受刑者を更生に導く教誨師活動を始めて20年になる。天台宗法人部長となり、毎週大津と千葉を往復する今でも2カ月に1度、約30人の受刑者の前で講話する集合教誨を欠かさない。

それ以外にも受刑者から「話を聞いてほしい」と求められれば刑務所に赴く。亡くなった受刑者の葬式や墓参りもある。全て無報酬だが「望まれればできる限りのことはしたい」。

受刑者の相談内容は所内での人間関係の悩みや家族の事柄が多い。天台宗妙音寺(千葉県御宿町)の浅野玄航住職(70)はそれらの話にじっと耳を傾け、共感できる点には「そうか、そうか」とうなずき、共感の意思をはっきりと示すよう心掛ける。

ただ、犯した罪は絶対悪だということは必ず伝えている。「お前さんは絶対やってはいけないことをやったんだぞ」と諭すと「そらぁ先生分かってんだ」と反発されることも少なくない。「そう言っているうちは『俺は悪くない』って気持ちがまだどこかに残っている。腹の底から『俺が悪かったんだ』って涙を流すくらいになるには相当の年月がかかる」

祖父の代から3代続けて教誨師。自身は49歳で公立中学の教師を退職した際、教誨師不足に悩んでいた父に誘われて始めるようになった。

教誨師としての基本は「責めず、許さず」。頭ごなしに責めたら受刑者は聞く耳を持たなくなるが、教誨師に罪を許す権利はない。受刑者に寄り添い、自らの罪の重さを受け止められるようになるまで、息の長い支援が必要だ。

どんな受刑者にも、まずは自らの命の尊さを自覚するよう促す。自分の命の尊さが分かって初めて他人の命の尊さも分かるとの思いからだ。そして、自他の命の尊さを腹の底から理解させるための期間が刑期であると悟らせる。

多くの受刑者と向き合ってきて、罪を犯す背後には富者へのひがみや弱者へのさげすみといった自己本位で他者を大切にしない心があると感じる。殺した相手には悪いことをしたという自覚はあっても、相手の家族や友人たちに大きな損害を与えたと気付いていない人も多いという。極端な身勝手さや視野の狭さの一つ一つを本人に指摘し気付かせていく。

「受刑者はいつかは社会復帰する。それまでにどう更生させるか。仏教の教え、天台宗の教えを総動員して更生の手助けをするのが役目です」

(岩本浩太郎)