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精神障害者の就労支援 今に息づく一隅の教え

岐阜県大垣市 天台宗新善光寺 出雲路基成副住職

2018年11月21日付 中外日報(キラリ ― 頑張る寺社・宗教者・宗教施設)

アットホームな雰囲気の作業場(左端が出雲路副住職)
アットホームな雰囲気の作業場(左端が出雲路副住職)

天台宗新善光寺(岐阜県大垣市)の出雲路基成副住職(54)は、主に精神障害者の就労を支援するB型事業所「工房さんぽみち」(同市)を立ち上げて来年で10年になる。社会復帰を目指す精神障害者の貴重な拠り所となり、これまでに同所から約30人が雇用契約を結んで作業に従事するA型事業所や企業へとステップアップした。

うつ病や統合失調症などの精神的な病に陥った人は、会社を辞め自宅に引きこもりがちになる。社会とのつながりが断たれてしまったこうした人たちの行き場をつくりたいとの思いで、2009年に自坊から約2キロ離れた所に同所を開設した。

出雲路副住職は大学卒業後、岐阜県の財団職員を経て、岐阜市の精神障害者の福祉施設に就職し、約5年間働いた。その後、地元の大垣市に精神障害者を対象とした事業者が少なかったため、寺の法人格で事業所設立の申請をしたところ許可が下りた。

現在の利用者は約20人。出雲路副住職や長男の佑基さん(29)ら6人の職員のサポートを受けながら、自動車の部品作りやフェルト製品の加工などに従事し、工賃も受け取る。「穏やかな対応をモットーに、障害者に来てもらいやすい雰囲気づくりに努めています」と出雲路副住職。常に利用者の話に耳を傾け、個々の特性や体調を見極めながら、それぞれに合った支援態勢を整える。

それでも「個々の利用者が今、どのくらいの仕事量が適切なのかを見極めるのは本当に難しい」と苦心する日々だ。精神障害を抱えると、いつ体調が崩れるか自身でも見通せない場合が多い。そのため、利用者が体調悪化の際に気兼ねなく休める態勢も必要だ。

「体調悪化を繰り返しながら平常化していくのが一般的です。最初は1日1時間といった短い時間しか作業できなかった方が通所するうちに積極的に取り組むようになったり、当初は表情の乏しかった人が笑顔を見せるようになったりするのを見ると、とてもやりがいを感じます」

元々、幼い頃から障害者を見掛けると何かしてあげたいとの思いがあった。同時に檀家のいない自坊の存続も考えなければならない。そこで行き着いたのが、寺が運営主体となって障害者を支援する現在の形だった。「社会の片隅で生きにくさを感じる人が生き生きと輝ける場でありたい。その根本には『一隅を照らす』という伝教大師の教えがあるのかもしれません」

(岩本浩太郎)