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うなぎ供養塔を建立 「救助」へ感謝忘れぬよう

埼玉県三郷市 真言宗豊山派延命院 石井秀誉住職

2018年11月28日付 中外日報(キラリ ― 頑張る寺社・宗教者・宗教施設)

うなぎ供養塔と石井住職
うなぎ供養塔と石井住職

埼玉県三郷市の真言宗豊山派延命院の境内に、石井秀誉住職(66)が建立したうなぎ供養塔がある。毎年、うなぎ料理店主や問屋、うなぎ好きが参列して供養会が行われる。

同寺のある彦倉地区にこんな昔話が伝わる。大雨が続き、古利根川の堤防が決壊。流された人々を助けるため、こぎ出した小舟から見えたのは、丸太状のものをつかみ、あるいはまたがり、難を逃れようとする子どもや老人たちだった。彼らを救ったのは縄のようにより集まったうなぎの大群で、地域の人々は恩返しのためにうなぎを食べないと誓ったという。

3代にわたり住職を務める同寺の食卓にもうなぎが上ることはなく、外でも一切口にすることなく育った。

同寺は足利時代の創立で、1486年、古利根川の洪水の際に上流から流れ着いた虚空蔵菩薩像が福徳や智恵を授けると人々の信仰を集める。

うなぎは虚空蔵菩薩の化身または使者といわれ、同寺にもうなぎを描いた絵馬が伝わる。近年まで産卵場が判明しなかったなど、うなぎの謎に満ちた生態も信仰の対象となるのに影響したと石井住職は推察する。

高齢の他地域の人には現在も「彦倉の人は食べないんだよな」と言われるが、近年は風習を知らず、うなぎを食べる住人も増えた。

石井住職は「風化させてはいけない。うなぎを通じ、命の大切さを考え、感謝の気持ちを持って生活できるよう供養塔を作ろう」と発願。2005年に建立した。大日如来を表す球体の中にうなぎが浮き彫りと線画で刻まれている。球体表面には大日如来、観音菩薩、虚空蔵菩薩の梵字を刻み、両脇を子育て観音像と虚空蔵菩薩像が守護する。

今年の供養会は10月28、29日に行われた。一般参列しやすい日曜と料理店などの定休日の月曜に設定。ホームページを通じ遠方から供養塔婆を申し込む業者もいる。

実は虚空蔵菩薩への信仰があつい地域やうなぎに救われた伝承が残り、うなぎを口にしない風習が伝わる地域が日本各地にあるという。石井住職は幾つかの地域に電話で問い合わせ、実際に足を運んできた。今後も地域との交流や情報交換を重ね、ゆくゆくは「うなぎサミット」を開きたいと熱意を燃やす。

(山縣淳)