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中国政府が宗教を管理 バチカンとは緊張関係

上智大教授 山岡三治

2014年7月23日付 中外日報(世界宗教地勢)

中国

去る4月29日、浙江省温州のカトリック三江教会堂(2千人収容)が違法建築という理由で当局から強制的に取り壊された。過去には福建省福州市、浙江省杭州蕭山の教会も取り壊され、司教や司祭、一般信徒もしばしば逮捕されている。2012年7月7日には政府公認の上海新協働の馬達欽司教が着任早々に「愛国会」(政府公認のカトリック教会組織)離脱を公言したので即座に軟禁され、協働司教職(司教継承権)も解かれた。

カトリック教会は体系化されたひとかたまりの大きな団体なので中国政府が他の宗教より危険視しているのであるが、プロテスタント教会もしばしば取り締まりを受けている。大掛かりな例としては、浙江省寧波の教会が破壊され、安徽省の牧師が逮捕され、とりわけ03年6月23日には湖北省武漢の地下教会(「家の教会」)の指導者が100人も逮捕され、監禁されたり、労働再教育に送られたりしている。

中国のキリスト教信者の人口は中国社会科学院年次報告等によれば約3千万人(うち2300万人がプロテスタント)であるが、これに地下教会を含めたら1億3千万人を超えるという推測もある。だが、多くの研究者の意見としては総人口の5%、つまり6700万人程度と見られる。

法輪功などの新宗教が取り締まりを受けるのは団体が大きくなって反政府運動になるのを恐れるからであるが、キリスト教会については清王朝時代、欧米植民地主義と同調して布教活動をして社会を混乱させたとして、政府は外国の干渉を拒否し、中国人による独自の自立した教会を打ち立てようとしている。1950年代、中国独自のカトリック教会として「愛国会」が、プロテスタントでは「中国三自愛国運動委員会」が組織された。教会がそれらに所属し、政府の管理を受けるかぎりで「宗教の自由」が保証されるが、従わないならば宗教でなく反政府活動と見なされる。

今日の中国は貧富の格差が広がって共産主義から人心が離れ、心の飢えが宗教へと人々を向かわせているので信徒は増加する一方である。一般信徒は公認教会であるか非公認であるかにかかわらず礼拝やミサの双方に顔を出す人もおり、どの教会もあふれるほどの信徒がいる。それぞれの教会の若い指導者にはローマや他の欧米諸国に留学する人も多く出てきているので、帰国者が増えれば教会は少しずつ変化していくと思われる。

バチカンとの関係で言えば、2008年に中国管弦楽団が教皇を表敬訪問し、モーツァルト「レクイエム」を演奏した。同年には教皇は5月24日を「中国のために祈る世界祈祷日」として発表し、13年3月13日にはマテオ・リッチらが中国宣教に尽くしたイエズス会から教皇が選出され、中国政府は彼にお祝いのメッセージを送った。教皇も翌日就任した新国家主席習近平に同様のメッセージを送った。

他方で13年5月7日の『人民日報』は「テロリストの背後には往々にして、極端な宗教思想の幽霊がただよっている」「宗教活動に国家の法律と法規、政策方針を順守させるべき」(中国宗教学会卓新平会長)という記事があるので、中国が昔から継承している「政教一致体制」(かつては儒教が政治を握り、現在はそれに代わって共産主義が握る:王再興「現代中国におけるキリスト教」)があるかぎり、バチカンと中国との緊張関係はしばらくは継続するであろう。

やまおか・さんじ氏=専門は宗教学、中国のキリスト教など。カトリック教会を研究しており、『カトリック神学への招き』など著書多数。