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西アフリカ北はイスラーム、南にキリスト教 経済格差が過激派拡大

国立民族学博物館教授 竹沢尚一郎

2014年11月19日付 中外日報(世界宗教地勢)

西アフリカ

西アフリカおよび北アフリカでは、2013年1月にアルジェリアの天然ガス生産基地を「マグリブ諸国のアルカイダ」の分派が襲撃して、日本人10人を含む39人の外国人の命が失われるという痛ましい事件が起こっている。

一方、ナイジェリアでは、やはりイスラーム過激派組織である「ボコ・ハラム」がテロや民間人への襲撃をくり返しており、14年4月に寄宿舎から女子高校生200人以上を拉致した事件は記憶に新しい。シリアの「イスラーム国」を見るまでもなく、イスラーム過激派組織の伸張は世界的な現象だが、西アフリカは中東と並んでその最大の震源地なのである。

なぜか。それには、歴史的および社会的な背景がある。西アフリカは宗教的に二分されており、北部ではムスリムが優勢であり、南部のギニア湾岸ではキリスト教徒が支配的である。その結果、ナイジェリアやガーナなどのギニア湾岸諸国では、北がイスラーム圏、南がキリスト教圏というように分断され、しばしば両者の間で対立が生じている。

一方、サハラ砂漠に面したセネガル、マリ、ニジェールなどの国家では、人口の90%以上がムスリムであり、ここでは宗教対立は存在しないと思われるかもしれない。しかし、これらの国々では砂漠の遊牧民であったトゥアレグ人と、南部の黒人系の農民との間で根深い確執があり、これが紛争の大きな原因になっている。

こうして見ると、西アフリカでイスラーム過激派組織が伸張したのには、複数の背景があることが理解されてくる。

キリスト教徒とムスリムとの間で国が二分されている国々では、多くの場合、政治指導者は南部の出身なので、北部のムスリムに根強い不満があること。深刻な乾燥化、砂漠化によって砂漠での生活が困難になった人々が、密輸などの不正手段で生計を立てることを余儀なくされ、政府と対立していること。さらに、アフリカ全土で見られる失業率の高さが若者から将来への希望を失わせ、これらの組織への接近を可能にしていること。

とはいっても、過激派組織の成員数は多いものではない。どちらもせいぜい千~2千人と考えられ、その封じ込めは不可能ではないはずである。にもかかわらず、それが実際には困難なのは、外国人の誘拐による身代金や麻薬やタバコの密輸によって、潤沢な資金を持っていることが最大の要因である。しかも彼らは、トゥアレグ人の独立運動に結びついてマリでの活動を活発化したり、ナイジェリアでは北部の穏健派ムスリムの間に広がる根強い反政府感情に紛れたりと、一般市民の間に姿を隠す術を知っている。

であれば、これ以上テロ活動が広まらないようにするには、取りうる手段は二つだろう。一つは、彼らの資金源を断つことであり、そのためには密輸や誘拐などを取り締まる政府の支援を強化することである。もう一つは、住民の大半がそうである穏健派ムスリムとの関係を断たせることであり、より公正で経済発展の可能な政府の樹立が不可欠である。

もっとも、処方箋の作成は可能だが、その実現は困難である。大半が汚職にまみれたアフリカの国々に、公正な政治の実現を期待するのは困難だからである。であれば、西アフリカは今後も紛争の火種を残しつづけるのかもしれない。

たけざわ・しょういちろう氏=専門は西アフリカ研究、アフリカ史。著書に『西アフリカの王国を掘る』『被災後を生きる』など。