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台湾さながら宗教博物館 異彩放つ仏教NGO

天理大おやさと研究所教授 金子昭

2014年12月3日付 中外日報(世界宗教地勢)

台湾

台湾に行くたびに感じるのは、仏教信仰の層の厚さである。都市部でも農村地域でも寺廟の存在感が際立つ。日本には寺院と神社とを合わせた寺社という表現があるが、台湾の寺廟は、文字通り仏教(寺)と道教(廟)が混淆している場合が少なくない。そうした寺廟は極彩色に塗られ、堂内には芳香がただよい、独特の読経メロディーが流れている。台湾人にとって寺廟はとても身近な存在で、若い人々が参拝する姿もよく見かける。

台湾人の9割を占める漢民族の多くには重層信仰的な傾向があるが、その一方で先住民族(現在14族が認定)の間ではキリスト教諸派が浸透し、これらキリスト教では重層信仰的側面は見られない。日本の新宗教も活発に伝道を行っているほか、出稼ぎや移民として来ている東南アジア出身の人々がそれぞれの国の宗教文化を持ち込んでいる。九州ほどの大きさの島国であるが、さながら宗教博物館のような感がある。

台湾の仏教は、日本のような厳密な意味で何々宗という宗派には分かれていない。信者も、固定したコアのメンバーもいるが、いくつかの教団や寺院をかけもちする人々も多い。四大仏教教団として知られるのが、佛光山、法鼓山、慈済会、中台山である。

佛光山、法鼓山、中台山が戦後、中国大陸から来た外省人の男性僧によって設立されたのに対して、慈済会は本省人の尼僧によって設立され、前三者に比べて台湾人アイデンティティーをより強調する傾向がある。また、多方面にわたるボランティア事業(四大志業八大脚印と呼ぶ)を大規模に展開している教団として異彩を放っている。

慈済会では会員制度を取っており、仏教信者だけでなく他宗教や無宗教の人々をも取り込んで、団体組織としては超宗教的な性格をも有している。もちろん核心部分は仏教であり、しかも創立者で現代表でもある證厳法師(1937年生まれ)のカリスマ性がきわめて強い。会員総数は400万人を超え、世界最大の仏教NGOである。

今年、慈済会は創立48周年を迎えた。これを記念する大規模な灌仏会が4月末から5月初旬にかけ世界各地で開かれた。40カ国で合わせて460回、約36万人が参加。台北では中正紀念堂前の広場で2回に分けて式典を開催、合計2万5千人余りが参加した。広大な広場を幹部会員たちが埋め尽くし、「三千大千世界」をテーマに巨大なマスゲームを繰り広げた。

台湾では、中国寄りの国民党と台湾独立的傾向を持つ民進党とが、政治的に激しく対立している。慈済会はどちらの側にもつかないことで、政治的にはクリーンな印象を与えている。しかし現実には、これだけ教団規模が大きくなると、存在自体が否応なく政治的たらざるをえないし、政治家側も慈済会の存在を無視できない。今回も、台北での灌仏会では馬英九総統、呉敦義副総統も政府関係者を引き連れて式典に出席した。

證厳法師の「慈済宗」宣言(2006年)以後、慈済会では独自の教学形成の動きも顕著になっている。2年後の創立50周年を控え、超宗教的なNGO組織という側面と同時に、「慈済宗」としての団結力をいっそう強めつつあるが、それはポスト證厳法師の時代の同会の将来を見越しての動きでもあるように思われる。

かねこ・あきら氏=専門は宗教倫理学。台湾の宗教文化、宗教思想を研究している。著書に『驚異の仏教ボランティア』など。