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アメリカ合衆国政治とメディアと宗教 TV伝道から深い関わり

麗澤大教授 堀内一史

2015年3月18日付 中外日報(世界宗教地勢)

アメリカ合衆国

大統領予備選挙を1年後に控えた今年1月、米国東部は大寒波に見舞われ、ニュージャージー州知事で共和党のクリス・クリスティー氏は、雪に閉ざされた中で、ツイッターのフォロワーとのチャットに余念がなかった。米国の政治家にとって、ツイッターなどのソーシャルメディアは、政策論議に人間性を織り交ぜることで全米規模の支持を獲得する格好の道具となっている。

ソーシャルメディアなど高度な科学技術で世界をリードする米国は、人口の78・5%がキリスト教徒である。うち51・3%はプロテスタント、23・9%はカトリック教徒が占める。さらに、プロテスタントが通う教会は、福音派教会(26・3%)、主流派教会(18・1%)、黒人教会(6・9%)に分類され、福音派と黒人のキリスト教徒は共に信心深い。

信仰とソーシャルメディアには相関関係がある。ツイッターやSNSなどを使って自らの信仰について意見交換をしている人の割合は、信心深い人の方がそうでない人より多いことが、最近の調査で分かった。その割合は、福音派教会に通う人では34%、黒人教会では30%、主流派教会では15%、カトリック教会では15%であった。

近年、米国の宗教と政治は密接な関わりを持つようになったが、テレビ伝道師の活躍に負うところが大きい。1979年に原理主義者のジェリー・ファルウェル師が「宗教右派」を組織し、80年の大統領選挙で、家族の価値や学校での祈りの復活、妊娠中絶や同性愛への反対といった、共和党のレーガン候補が共有する価値の重要性を訴え、レーガン政権樹立に貢献した。その時の媒体がテレビの宗教放送であった。その後、宗教右派を牽引したパット・ロバートソン師やジェイムズ・ドブソン師もテレビやラジオ放送を通じて、共和党候補を支持してきた。

しかし2004年のブッシュ大統領再選以降、宗教右派の政治的影響力は後継者問題などにより弱まりつつあり、同性婚を認める州が36に拡大したことがこの傾向に拍車をかけている。

ソーシャルメディアが選挙運動に本格的に活用されたのは08年の大統領選からである。同選挙で共和党マケイン候補を制した民主党オバマ大統領の勝因は、宗教・政治的にリベラルな「宗教左派」や無宗教の有権者からの支持もさることながら、何よりもソーシャルメディアによる若者票の獲得にあった。

今年の1月30日、意欲を見せていた共和党のロムニー氏が出馬を断念した。これによりロムニー支持者の票はジェブ・ブッシュ氏かクリスティー氏に流れるといわれるが、同氏はブッシュ氏を支持しないという。

ある保守系の調査では、茶会が支持するリバタリアンで、54万人を超えるツイッターのフォロワーを持つランド・ポール氏と、宗教右派が推す福音派のマイク・ハッカビー氏の支持率とが並び、ブッシュ氏がそれを追っている。だが、ソーシャルメディアのユーザーはテキサス州選出上院議員のテッド・クルーズ氏を有力視している。

こうして共和党議員がデジタルギャップを埋めようと躍起になっている一方で、広く出馬が予想される民主党のヒラリー・クリントン氏はソーシャルメディアをあまり頻繁に利用していないといわれる。16年の大統領選挙から目が離せない理由はそこにもある。

ほりうち・かずのぶ氏=専門は宗教社会学、アメリカ研究。著書に『アメリカと宗教―保守化と政治化のゆくえ』など。