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韓国性的少数者を抑圧 保守系キリスト教が主導

京都府立大准教授 川瀬貴也

2015年5月20日付 中外日報(世界宗教地勢)

韓国

韓国はアジア有数のキリスト教国として知られている。最近の統計では、カトリック・プロテスタントを合わせた比率は約30%を占め(信仰を持つと答えた人口の約半数)、日本にも多くの韓国人宣教師が存在する。

韓国現代史を振り返ると、歴代大統領の過半数はクリスチャンであり、軍事政権下における民主化運動などの先頭に立つ牧師も多く、キリスト教は韓国現代史を語る上で欠かすことのできない存在となっている。ただ、解放後の韓国のキリスト教は、冷戦構造のもと、「反共」という国是との親和性が高い「保守的な信仰(主としてプロテスタント)」が大きな勢力を有してきたのも事実である。その「保守性」が近年悪い意味で人々の耳目を集めている。その理由は彼らの性的マイノリティー(LGBT)への対応である。以下ではいくつかの関連事件のあらましを紹介しよう。

2012年9月に、韓国の公共放送KBS傘下のバラエティー専門チャンネルKBS Joyにおいて、「XY彼女」というタイトルのバラエティー番組が放映された。これはいわゆる「性的マイノリティー」の問題を取り上げたもので、自らゲイであることをカミングアウトしたタレントが司会者を務めていた。この番組に対しては放映前から保守的な団体(宗教団体も含む)が放送中止を強く要求し、第1回の放映当日には200以上の保守系団体が連名でKBS本社前において社長退陣などを要求する激しい抗議活動を行い、その混乱から、2回目以降の放映ができなくなった。この抗議活動の中核の一つに保守的なキリスト教団体がいた。同様の抗議活動は同性愛を描いたドラマでも行われた。

14年6月7日、ソウル市において性的マイノリティーの権利を主張する「クイア・パレード」が行われたが、多くの保守系団体によって妨害され、現場は大混乱になった。これにも、保守的な信仰を持ち、同性愛嫌悪を前面に押し出すキリスト教の一派が加わっていた。彼らはパレードの前に寝転んで進行を妨害したり、「悔い改めよ、天国は近い、同性愛は罪」「子どもたちは健全な文化の中で成長せねばならない」というプラカードを掲げたりした。その結果、パレードに参加した世界各国の人々に韓国社会の根強い同性愛嫌悪の存在をアピールすることになってしまった。

同年11月20日には、ソウル市で市民と専門家で構成する委員会で制定を目指した「ソウル市民人権憲章」の公聴会が、同性愛反対を掲げる団体によって激しい抗議活動を受け、流会した。その人権憲章の「同性愛差別禁止」に保守系団体がかみ付き、結局この憲章が制定されない(市民有志が自主的に宣言したが、ソウル市は公認せず)という事態に至った。

このような近年の保守系教会の激しい反同性愛運動は、世界中でLGBTの権利が認められる潮流に対するバックラッシュと評せるだろう。しかし、最近急に出てきたものではなく、前述の韓国教会元来の保守的な傾向が刺激を受けて先鋭化したものと考えられる。もちろんこのような動きに対して、リベラル派からは反発と反省の声が出ている。18年の平昌における冬季オリンピック開催を控える韓国において、このような動きは一層世界からの注目を浴びることになり、対応を迫られることになるだろう。

かわせ・たかや氏=専門は宗教学、日韓近代宗教史。著書に『植民地朝鮮の宗教と学知』など。