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教訓は生かされているか 「オウム事件後」の宗教と宗教学(1/6ページ)

2014年4月2日付 中外日報(深層ワイド)

オウム真理教の地下鉄サリン事件から19年。麻原彰晃(松本智津夫)教祖をはじめ、犯行に関わった元幹部、信者に対する裁判は、逃亡していた平田信被告らを除いて完結したが、元信者らは教団名を変えて今も活動している。オウム事件は終わったといえるのか。この犯罪が「宗教」に対して問い掛けるものは何か。(佐藤慎太郎、津村恵史)

19年間問われ続けたオウムの犯罪を伝える新聞紙面19年間問われ続けたオウムの犯罪を伝える新聞紙面
ひかりの輪オウムの元信徒らを中心的な構成員とする。2007年5月にアーレフ(現Aleph)から独立した。代表は上祐史浩氏。

「我々は、あのサリン事件を忘れないぞ」――「ひかりの輪」が入居するマンションでは今も住人が横断幕を掲げる。ここではオウム事件はまだ風化していない。

日本で例のない、特異で残虐な教祖と弟子の犯罪はなぜ起きたか。宗教団体が大量殺人、「国家転覆」を企てるに至ったことについては、麻原教祖の特異な個性、教義を専ら重視する見方とともに、麻原教祖がつくり上げた教団の暴走(周辺が祭り上げた)という分析もなされている。

これに関し、『情報時代のオウム真理教』(2011年)などの著書がある渡辺学・南山大教授は「一次証言や実証的研究も出てきて、かなり初期段階からの問題点が指摘されている」と「祭り上げ」論には距離を置く。

オウムの教義については事件直後から「サブカルチャー」の影響が指摘されてきた。

麻原教祖に前後する世代から見ると、オウムの教義は時代のある雰囲気を反映している。超能力や超常現象などを扱う雑誌は今も存在するが、それらがもう少しポピュラーだったころ。この種の話題がTVの娯楽番組として扱われ、この精神的雰囲気の裾野を形成する役割も果たしていた。

昨年、上梓した新著でオウム問題を論じた大田俊寛・埼玉大非常勤講師はオウムの思想の核心部分を「霊性進化論」と定義する。振り返るならば、少なくとも一部の人たちにおいて、「霊性進化論」が閉塞状況打破の欲求を刺激した精神的雰囲気は存在した。オウム真理教に入信し、教団の犯罪に加担することになった元信者の多くは、程度の差はあれ、これらの直接、間接の影響下で育ったと思われる。

オウムが独自の「霊性進化論」をつくり上げるために利用したさまざまな材料。その中には無常や解脱など伝統仏教の思想の独自解釈もあれば、オカルティズムなどマイナーなメディアが検証を経ないで取り上げてきたさまざまな言説もある。

オウム事件後、霊感商法問題等も踏まえ、心霊現象などを適切なチェックを経ずにエンターテインメントとして扱うテレビ番組に対しては、宗教研究者から問題点が指摘されてきた。オウム事件の教訓が社会に生かされているか否かを示す指標の一つだが、番組制作などのモラルや、そうした番組を受容する社会の姿勢を見る限り、教訓が浸透しているかどうかは疑わしい。