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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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利益追求から精神性重視へ “社縁”を深める宗教の役割(1/7ページ)

2014年4月30日付 中外日報(深層ワイド)

東京都千代田区のビル街、メーンストリートを車がせわしなく行き交う中に日枝神社の鳥居が静かに鎮座している。桜の舞う4月初め、15人ほどのサラリーマンらが本殿の中に次々と入っていった。スーツ姿が初々しい若者の姿も。あるメディア関係の企業の社員がこの日、入社式を終えて新入社員と共に昇殿参拝にやって来た。(甲田貴之)

日枝神社で昇殿参拝のため本殿に向かうスーツ姿の従業員ら
日枝神社で昇殿参拝のため本殿に向かうスーツ姿の従業員ら

利潤追求のため効率を重視する企業と、利益よりも高い精神性を重視する宗教が、さまざまな形で関わっているケースが数多く見受けられる。日本の企業にとって利益追求と共に大切にしているのは社業の永続であり、集団性だ。血縁や地縁と並び称せられる“社縁”の強化に宗教は大きな役割を果たしている。

参拝を終えて日枝神社の本殿から出てきた経営者は「会社を創設して24年、社員の健康と商売繁盛を祈るために続けている。役職者だけでなく、都合のつく社員は皆、参加する。社内には神棚も祀っており、お焚き上げもちゃんとしている」と話した。

年度始めの企業の参拝について伊久裕之・権禰宜は「徐々に増えていると実感している。日本文化の根本には神仏に対する畏敬の念があり、特に東日本大震災以降、そうした信仰心が企業でも見直されているのでは」と語る。

日枝神社の氏子区域は千代田区、新宿区、港区、中央区。政治行政の中心地であると同時に商業地域でもある。出社前に神社に朝参りする会社員も多く、その人たちのための職運隆昌・職能向上を祈願したビジネス守りを用意するなど神社もその思いに応えようとしている。

商社やメーカーなどの企業にも神社がしばしば祀られている。西武百貨店渋谷店の屋上には東伏見稲荷大明神、資生堂の東京・銀座の本店屋上には成功稲荷が鎮座し、社員らが参拝する。

石井研士・國學院大教授は「日本では企業という共同体が初詣などに行く『企業参拝』や、僧侶を呼んで葬儀を行う『社葬』、創業者、経営者、社員などの物故者を祀る『法人供養塔』を建立するといった文化がある。それら企業の信仰は、流行や観光の一つと考えられるスピリチュアルやパワースポットとは異なり、日本の宗教文化を如実に表している。その信仰は“社縁”を結び、確認する役割を果たしている」と解説する。

宗教は共同体である企業と、集団の中の一個人としての社員とも向き合っている。宗教者の在り方について伊久権禰宜は「企業の昇殿参拝では企業と共に社員一人一人に対する祈りの思いを込めている。企業としても社員も来て良かったと思ってもらえる神社でありたい」と、社会の構成要因である企業の縁が深まることを願っている。