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人づくりを宗教の知恵に学ぶ

「職域布教」でビジネス界に仏縁(1/5ページ)
2014年7月16日付 中外日報(深層ワイド)

ビジネスマンにとって営業活動の苦労や社内の人間関係の悩みなど、心をすり減らす日常体験は挙げればきりがない。近年は企業間の国際競争も激化。目まぐるしい環境の変化の中でも、大局を見据えて活躍できる人材の養成も課題だ。日本では企業の要請による社員研修や「職域布教」の形で、宗教者がそうした問題に一定の役割を担ってきた。長い歴史の中で人類が積み重ねてきた宗教の知恵が「人づくり」と深く関わる、との認識は宗教者と企業関係者の双方に共通している。(池田圭、山縣淳)

30年以上にわたって企業研修の講師を務めてきた関西地方の僧侶は、地域の学校などを含めると最盛期には年間約200回講演をこなしていた時期もある。「ある会社の宮崎での温泉旅行に法話のためだけに呼ばれ、1日でとんぼ返りしたこともある」と笑う。

「不景気や経営の合理化の影響からか、10年前と比べると依頼は半分ほどに減った」が、「宗教への潜在的なニーズ」自体が低下しているとは思っていない。

「近年は若者の離職率の高まりも課題。それを踏まえ、職場の人間関係をうまく構築できる環境整備のために仏教が求められているのではないか」と感じている。企業からの共通の要望は「自己変革」と話す。

戦前から高度経済成長期にかけ、浄土真宗本願寺派では国鉄(現JR)の要請で僧侶が各地の鉄道事務所に出向いて法話を行う「職域布教」が展開され、「鉄道道友会」という僧侶の会も組織された。

元会員の平山義隆・光榮寺前住職(82)=広島県福山市=は岡山管区の担当。「わざわざ岡山の駅員さんが2人連れ添ってくれた。福山から岡山までの電車は1等車でした」と振り返る。

岡山の事務所には毎回20人ほどが参集。浄土真宗の門徒ばかりではなかったが、皆熱心だったという。道友会では毎年1泊2日の日程で、築地本願寺(東京都中央区)での国鉄関係物故者の追悼法要と国鉄の施設見学も行われていた。

「職域布教」を通して直接門徒が増えたわけではないが、職員の精神修養とともに、確実に仏縁を広げることができた。そうした宗教界とビジネス界の関わりは今もさまざまな形で引き継がれている。

毎年僧侶に講師を依頼している企業経営者団体の役員は「人としてどう行動するか。そこに宗教との接点が出てくる」と説明。特定の信仰を持つ経営者が教えを社員教育に生かしたり、新規事業の立ち上げにつなげた例もある。