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小田川の氾濫で本堂などが3メートル以上浸水した曹洞宗源福寺(岡山県倉敷市真備町)。岡山県曹洞宗青年会の会員らが仏具や家具を搬出していた(11日)
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荘厳な雰囲気の中で最期を 再評価される「寺院で葬儀」(1/5ページ)

2014年9月3日付 中外日報(深層ワイド)

専用会館やセレモニーホールでの葬儀が一般的になって久しいが、近年寺院の本堂で営まれる「本堂葬」が増加の兆しを見せている。葬儀のために設計されたホールは便利だが、寺院ならではの荘厳な雰囲気の中で人生の最期を締めくくりたいと思う人も少なくない。「終活」が一般化し自分の葬儀について真剣に考える人が増えた今、寺院で葬儀を営むという昔ながらの姿が見直され始めている。(有吉英治)

花が飾られた内陣の脇で納棺の儀が営まれた(曹洞宗大蔵寺で)

「かた結びでお願いします」。葬儀社社員の言葉に、故人のすねに当てられた脚半のひもを、遺族は思いを込めて引いた。本堂内陣の脇間に安置された遺体を親族が囲み、粛々と死に装束を整えていく。遺体が棺に納められると、見守っていた住職が「何か入れてあげたい物は」と語り掛け、「お酒はあまり飲まなかった」「おせんべいが好きだった」と故人の思い出が語り合われ、張り詰めていた空気がひととき和んだ。

横浜市緑区の曹洞宗大蔵寺では、本堂で通夜・葬儀を営み、その前に堂内で納棺の儀も執り行っている。佐藤直道住職(53)は「遺族にとって一番悲しみが募るのが納棺の時。僧侶としてはそこに立ち会いたい」と話す。

同寺で本堂葬を始めたのは、7、8年前に一人の男性が葬儀費用で子どもに苦労をかけたくないと相談に来たことがきっかけだった。本堂をもっと多くの人に使ってもらえないかと考えていた佐藤住職は、本堂葬を提案。須弥壇に花を飾るだけで、特別な祭壇を使わないため、金額は低く抑えられた。

その後もそうした人に応えて何度か本堂で葬儀を行い、徐々に式の形が整ってきた2011年、本堂葬を勧める寺報を発行。しかし檀徒の反応は鈍かった。寺での葬儀といわれても、ほとんどの人がイメージできなかったからだ。佐藤住職はそれまでの写真を見せては、その意義を伝えていった。

「菩提寺の本尊は、檀徒にとって最も身近な仏様。心の通じる仏様の前で葬儀を挙げてもらいたい」。仏教者の思いが少しずつ通じていき、今では年間20件ほどある葬儀のほぼ半数が本堂で行われる。参列した人たちは墓参の際に本尊に合掌してから墓地へ向かうようになるなど、教化にもつながっているという。

高度経済成長の時代が終わり、葬儀の小規模化が進む。大規模葬儀が行われていたころに建設された葬儀ホールは縮小を余儀なくされ、数十人が参列するのに適当な広さの寺院本堂が、式場として再評価されつつある。