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五重塔はなぜ倒れないのか 地震への備え社寺の知恵(1/4ページ)

2014年10月15日付 中外日報(深層ワイド)

3年半前の東日本大震災では東京・首都圏も激しい揺れに襲われ、東京タワー(333メートル)は先端部が曲がったが、建設中の東京スカイツリー(634メートル)は被害がなかった。スカイツリーは五重塔の構造を参考にして設計されたので無事だったといわれるが、木造の五重塔は確かに地震に強く、19年前の阪神・淡路大震災をはじめ地震による倒壊の例はほとんどないという。五重塔がなぜ倒れないのかについては諸説があるが、礎石から最上部の相輪まで塔の内部を貫く心柱という一本の柱が閂の役目を果たし、地震の揺れで各層が浮き上がるのを防ぐためなどの説が有力だ。近い将来に南海、東南海などの巨大地震が起こる可能性が高いとされるが、先人の知恵と人々の信仰が息づく社寺の地震への備えは万全か。

阪神・淡路大震災で京都市南部は震度5の強い揺れに見舞われた。東山区にある国宝・蓮華王院本堂(三十三間堂)も南北方向に激しく揺れたが、建物や堂内に安置されている千体の千手観音立像にはほとんど被害はなかった。

南北に長い堂内(約120メートル)には本尊左右の内陣にそれぞれ10段の階段状の台座が設けられ、千手観音立像がずらりと横一列に立ち並ぶ。

立像は釘などで台座に固定されてはいない。仏像本体は足下の枘で蓮台にはめ込まれ、そして蓮台も同じように枘で台座とつながっている。枘と枘穴の間には多少余裕があり、それぞれがぴったりときつく固定されているわけではない。

三十三間堂本坊妙法院門跡の田渕清晃執事(管理部長)は「仏様の階段状の台座は東西方向なので揺れが南北方向だったことが幸いした。そしてこの柔軟な構造が地震の揺れを仏様本体に直接伝えず、他に逃がす役割を果たしたのではないか」と言う。

また、1266年の現在の三十三間堂再建時に用いられた、棒などでたたいて固めた厚さ10センチ程度の土の層を何層も積み重ねた「版築」という基壇の工法や、堂が重い土壁ではなく羽目板の壁を多用した構造だったことも地震の被害を少なくしたのではないかと指摘した。

「版築は三十三間堂だけでなく法隆寺など多くの寺院建築でも用いられており、いわば先人らの知恵だ。この知恵を受け継ぎつつさらに工夫を凝らして、地震が頻発するこの国で、先人らから受け継いだ大切なお堂と仏様を守り次代に伝えていくのが私たちの務め」

こう力を込めた田渕執事に、南海、東南海地震対策を問うと、「ベアリング付きのコンクリート基礎などの免震工事は相当な経費が掛かるし、国宝の建物の現状変更となる。文化庁には早くからどのような効果的な免震対策があるのか研究してほしいと申し入れている」と述べ、財政的に脆弱とされるわが国の文化財行政の充実を強く望んだ。