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寺門復興どころではない 福島の原発補償は課題山積(1/4ページ)

2014年12月10日付 中外日報(深層ワイド)

東日本大震災に伴う東京電力福島第1原子力発電所の事故で、避難生活を送る福島県相双地方の寺院はおよそ40カ寺。避難の対象地域では除染や立ち入り制限の緩和など一定の前進もあるが、住民の帰還のめどは立っておらず、寺門の復興どころか、その前提となるビジョンを描くことすら困難な状況が続く。東電に対する補償請求も宗教法人特有の事情から課題が多い。(池田圭)

福島市の本願寺派福島県復興支援宗務事務所で弁護団(奥)を交えて開かれた補償問題についての会合(11月13日)

「これでは話にならない」。浄土真宗本願寺派東北教区相馬組の7カ寺が、11月13日に福島市の同派福島県復興支援宗務事務所で開いた東電への補償問題に関する会合で、怒りとも落胆ともつかない声が上がった。

東電への賠償請求は同社への直接請求と、政府が設置した原子力損害賠償紛争解決センター(ADR)への和解仲介申し立ての大きく分けて二つで進められている。

7カ寺は集団で後者を選択し、今年5月末までに弁護団を通して①事故がなければ本来得られたはずの逸失利益と、避難先での宗教活動で必要になった物品を購入するなどの追加的費用②仏具類の財物賠償――をADRに提訴した。

会合で問題になったのは、7カ寺のうち1カ寺にADRから提示された仏具類の和解案。当該寺院の希望額に対して「金属製は10%、木製は20%」という内容で、「明確な根拠が分からない」と弁護団も困惑気味だった。

弁護士の一人は「仏具は長年使用されるので、減価償却でゼロ円になってしまう」と語ったが、寺院側からは「長年使用されることで価値が高まるものもある」との声が上がった。

他方、直接請求を選択した福島県大熊町の真言宗豊山派の住職は、逸失利益は事故が起きた2011年~15年2月分を請求し、支払いも受けたが、仏具類の財物賠償は東電が補償の基準を示しておらず、請求していない。伽藍・境内地に関する賠償も同じ理由でまだだ。

東電は一般の民家などに固定資産税評価額などの基準を示しているが、非課税の宗教法人については基準や判例が確立しておらず、関係者の不安は大きい。同住職は相双地方の真言宗の避難寺院でつくるグループの代表を務め、請求基準について東電と協議を重ねてきたが、「そもそも宗教法人への理解が十分ではない」と話す。

相馬組のある住職がつぶやいた。「東電にしろADRにしろ、宗教法人のことはほとんど分かっていない。われわれだって伽藍や仏具を金額で換算したことはないんだ」