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暴力の正当化に宗教が使われた

「イスラム国」・仏誌襲撃事件(1/4ページ)
2015年2月11日付 中外日報(深層ワイド)

反イスラーム感情の高まり懸念 中外日報コメンテーターの声

イスラームに関わる事件が相次いで報道され、日本でもこの宗教への関心が高まるとともに、宗教の尊厳と表現の自由、そして暴力などの課題が浮かび上がってきた。中外日報は、宗教界の各分野で活躍する有識者に委嘱している「中外日報コメンテーター」(50人)の方々から、一連の事件と宗教の関係について聞いた。暴力の正当化に宗教が利用されているとの見方が多く、反イスラーム感情が高まることへの懸念が聞かれた。

日本人人質事件を大きく報じた新聞各紙の紙面

過激派組織「イスラム国」による人質事件で日本人2人が殺害された。ムハンマドの風刺画を掲載したフランスの新聞社襲撃では漫画家ら12人が死亡。逆にムスリムへの嫌がらせも頻発する。コメンテーターから寄せられた意見の大半は暴力を断固糾弾しつつ、過激派が起こした事件とイスラームの教えは分けて考えねばならないとし、冷静に受け止めている。

秋央文・曹洞宗昌建寺住職は「過激派が唱えるゆがんだ原理主義が、本来のイスラームの教義とは異なり、中東地域の紛争やそれに伴う軍事利権を支えている現実を直視すべきだ。間違っても敬虔なムスリムと彼らを同一視してはならず、その啓発活動を我々宗教者が率先して行う必要性を感じている」。

また河野亮仙・天台宗延命寺住職の「メディアの特質で、イスラームに焦点を絞ってしまう。実際は宗教ではなく、貧困や差別など社会構造の問題」との意見に代表されるように、問題の本質をきちんと見るべきだとする声が多い。

黒住宗道・黒住教副教主は「犠牲となった日本人ジャーナリストの解放交渉に際して重要な存在だったヨルダン軍パイロットはイスラーム信者だった。仏誌襲撃テロの犠牲になった警察官もイスラーム信者。テロを引き起こしているのは、ムスリムと非ムスリムの対立ではない」。

だが一部の者が教えに反する行動に出たと主張するだけでは解決の糸口にならない。宗教者の連携に尽力してきたアジア宗教者平和会議の畠山友利・事務総長は「本来のイスラームは平和の宗教であると世界に広く知らしめることが私たちの役割。それがいまだに達せられていない現実を、真摯に反省する謙虚さを持たねばならない」。

フランスの新聞が掲載した風刺画についても、岡田真美子・兵庫県立大名誉教授が「預言者ムハンマドの絵画化をムスリムの人たちが嫌がっているのに、あえてそれを繰り返すのはいじめと同じ。表現の自由というスローガンのもと、言葉の暴力が振るわれるのには共感できない」と述べるように、制作側の倫理観の問題として捉え、傷つけられたムスリムを思いやる意見が多数。

釋徹宗・相愛大教授は「今後、日本に住むムスリムが増えることが予想され、理解を進めることは喫緊の課題。日本は近代においてキリスト教的視点を身に付けた。次はイスラームの考え方を取り入れ、複眼的になれば違った世界が見えてくるはず」と提案する。

宗教者だからこそできる活動として川上直哉・日本基督教団仙台市民教会主任牧師は「祈りは力を持つ。最近はSNSの力が強くなっており、個人の意見発信も重視されている。本気の祈りが込められた一通のメールやツイッターが世界を変えることもあり得る」。

杉谷義純・天台宗宗機顧問も「安全確保には、自分だけの利益だけでなく、相手のことも考える必要がある。日頃からネットワークをつくり、宗教者が互いの信頼を高めていくことが大事」と、個々の努力が組織力として発揮されることに期待する。