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技術革新と寺社の対応 文化財修復現場の最前線では(2/5ページ)

2015年4月8日付 中外日報(深層ワイド)

技術と心のバランスで保存

文化財修復は技術革新と「心を込めた手技」のバランスが大切。加えて、費用面の課題や専門家の人員不足の問題もある。

適切な材料と手法が必要 “信仰の対象”は忘れずに

試料の入った容器を手にする早川さん。分子の容積を測定する機器は一度に100の試料を分析できる

東京都台東区の国立文化財機構東京文化財研究所・保存修復科学センター。研究室は不動明王像の白目部分の絵の具、巻物の紙継ぎに使われる接着剤、建造物のねじの隙間から採取した塗装など、様々な試料と最新の分析機器であふれている。修復に必要な材料・技法を開発するためだ。

修復現場では最新の科学を活用した技術の開発も進み、同センターでは周辺環境が文化財に与える影響の調査も行う。

「文化財を守るためには、使用する修復材と手法の適切な選択が必要」と話すのは主任研究員・早川典子さん(42)。

かつて誤った方法で絵画などの剥離止めに使用された合成樹脂「ポリビニルアルコール」が劣化し、作品を白くしてしまう被害が今になって出ている。早期に対応すれば除去することが可能だが、同じような失敗を繰り返さないためにも研究には慎重を期している。

研究室では「傷みや汚れを除去しても問題はないか」「この材料を使用して作品に影響は出ないか」を判断するため、分子の大きさを測定する機器(GPC)や、赤外線を照射し分子結合を見る機器(FTIR)を用いて試料などを分析する。その上で様々な分野の専門家と修復の方向性を協議している。

最近では文化財の修復には欠かせない接着剤「古糊」の再現も、科学的分析により成功した。日本画の表装作業などに使われる古糊は、新糊を甕に入れ土中で10年間寝かせる必要があったが、5度前後の冷室で保存することで熟成期間の短縮に成功し、最短2週間での製造を可能にした。

そんな“科学実験”の現場で、早川さんは作業前に必ず合掌する。“信仰の対象”として、その時代の人たちに大切にされてきた文化財に敬意を払うことは忘れない。作業に当たっては「あくまで主役は職人や技術者なので、その経験などを共有し取り入れながら、修復方法を提案していきたい」と話した。